ドイツの旅客機墜落事故から思うこと
- 2015年08月10日
- 安全
今年春に起こったドイツの旅客機墜落事故の原因としては副操縦士の自殺が有力な説のようですが、メンタルヘルス疾患を抱える労働者の配置や職務内容、就業制限について意見を求められることの多い産業医としては、背筋の寒くなるような事故でした。私自身航空業界の産業医を務めた経験はありませんが、おそらくパイロットの配置や就労に関する判断は厳重かつ慎重に行われていると思いますので、それでもこうした事故が起こってしまったことに非常に衝撃を受けました。今回の旅客機墜落事故を見るにつけ、他の一般の労働現場で発生している死亡労働災害のなかには、もしかすると自殺によるものも含まれているのではないかという懸念も起きてしまいます。実際に私自身長年産業医として産業現場に関わってきたなかで、労働災害にカウントされたものの、自殺したとしか考えられないような死亡災害に数件遭遇したことはあります。もちろん多数の人命を巻き添えにした今回の航空機事故と一般の労働現場での自殺を同列に語ることは出来ないとは思いますが、労働現場での自殺も人命はもとより操業や業務停止、事故処理その他による多大な損失を伴いますので、今回の航空機事故についても決して対岸の火事とは思えないのが率直な感想です。(福岡産業保健総合支援センターのメルマガに先月掲載されたものです)