服部産業医事務所の活動

最近話題のアレ「乳がん」②

 保健師の宮本です。

先週に引き続き乳がんの話題から、今週は「乳がん検診」についてお話します。

 

 乳がん検診啓発CMによって一般的に知名度の高い検査の1つですが、実際には「症状がないから」といって検診を受けていない、「以前受けて異常なかったから」と定期的に受診しない女性が非常に多いようです。

検診の目的は早期発見ですので症状がないからこそ受けるべきですし定期的に受けてこそ意味があります

20代の若い方でも「絶対に大丈夫」とは言い切れません。

しかも30代になると乳がん患者はぐっと増えます

(2010年調べ 20歳以下:0.4% 30代:5% 40代:18%)

乳がんは今や、日本人の働き盛り年代の女性が最も多くかかるがんなのです。

「あの時受けておけばよかった・・・」と後悔しないためにも、検診は必要不可欠です。

 

 

Q.1 乳がん検診ってなに?

 主に婦人科などで受けられる、乳がんであるか否かを判断するための検査です。

見たり触れたりして確認する視触診、触れてもわからないようながんを見つける超音波(エコー)検査マンモグラフィ検査(乳房専用のX線検査)があります。

 

Q2. 検査ではどんなことをする?

■問診・カウンセリング

 順番を待っている間に自覚症状の有無月経の状態(量や頻度など)、乳がんや卵巣がんの家族歴などの質問項目が並ぶ問診票に記入します。

これを基に医師や看護師が追加質問を行いますので、できる限り細かく正確に答えることが大切です。

 

■検査

 Q1で触れた通り、一言に乳がん検査といっても色んな方法があります。

各々特徴がありますので、簡単に説明します。

 

マンモグラフィ検査

 乳房を板で挟んで平たくし、乳房全体を撮影するX線検査

「乳がん検査は痛い」というイメージはここから来ています。

圧迫板で挟まれている10秒間に痛みを感じるのですが(個人差があります)一般に乳腺が小さい場合、引っ張り出し圧迫固定する際により強い力を必要とするので痛みが強い傾向があります。

痛みの程度は個人差が大変大きくて何ともいえませんが、我慢できる程度の圧迫痛と表現されているようです。

乳がん初期のサインである微小な石灰化を写し出せる唯一の方法ですが、乳腺が発達している20~30代はしこりと乳腺が判別しにくいことも。

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視触診

 医師が乳房を観察したり、手で触れたりして乳房やリンパ節の状態を確認する検査

しこりの有無の他、乳房に変形はないか・乳頭に湿疹や分泌物はないか・しこりやリンパ節に腫れがないかといったことをチェックします。

病院によっては所属女医の診察スケジュールをホームページ上に公開しているところもあります。

男性に触られるのはちょっと・・・という方でも検診を受けやすい環境が整ってきています。

 

乳腺超音波(エコー)検査

 乳房に超音波を当てて内部からの反射波を画像にし、異常を調べる検査

手で触れるのが難しい場所にあったり、触れても気が付かない程度の小さなしこりを見つけることができます。

しかもX線による被爆がなく妊娠中の検査も可能痛みがないなど体への負担が少ないのが特徴です。

乳腺が発達している20~40代に推奨されます。

 

■自己検診指導

 1~2年に1回の乳がん検診のほか、月に1度の自己検診も比較的早期にがんを発見するために重要です。

しこりやへこみなどがある乳房模型などを実際に触ってみるなど、自己検診の方法を指導してもらえる病院もあります。

 

Q3. 乳がん検診を受けるにあたっての注意点は?

月経後がベスト

 月経前は乳房を挟まれると痛みを感じやすい時期です。

そのため、マンモグラフィ検査は月経終了後1週間以内が望ましいとされています。

また妊娠中や授乳中もX線を使用するマンモグラフィ検査は不向きです。

 

上下別れた服装で

 検査では下着も含めてトップス全て脱ぐことになりますので、ワンピースではなく上下が分かれた服装で

婦人科検診も同時にする場合は、ショーツを脱ぎやすいようにスカートを履いていくと楽です。

 

問診票に記入するための準備を

 乳がんのリスクを調べるために重要な問診。

月経の状態(量や頻度・最後の月経はいつ来たか など)妊娠出産歴乳がんや卵巣がんの家族歴ホルモン剤の服用歴などをよく聞かれるので、質問項目を想定して事前に思い出しておきましょう。

 

保険証を持参

 症状がない場合の検診は自費診療ですが、万が一異常があった場合には保険診療に切り替わります。

検診の際には本人確認の必要もあるので、保険証は持参した方が後々楽チンです。

 

最後に・・・

 乳がんは早期発見と適切な治療をきちんと受ければ、がんの中でも完治・生存率は高い病気です。

一方発見が遅れた場合、乳房の切除や他の組織への転移など見た目の変化や命の危険など様々な問題が生じる病気でもあります。

小まめに自己検診を行い、年に1回程度は医療機関で乳がん検診を受けることがとても重要です。

北斗晶さんの公表は、そのことを改めて気づかせてくれたのではないでしょうか。

 

 それではまた来週!

 

参考 アストラゼネカ株式会社「乳がんJP」

   http://www.nyugan.jp/about/fact.html

画像 社会医療法人博愛会

   http://www.sagara.or.jp/index.html

産業医大の先生方と情報交換会を開催しました

先週末2日の18時より弊社折尾オフィスにおいて、産業医大の先生方と情報交換会を開催いたしました。弊社の嘱託産業医の仕事をお願いしている産業医大産業生態科学研究所の3人の先生とその指導にあたられている同研究所の大神教授、喜多村先生をお招きし、弊社のスタッフも加わり情報交換を行いました。3人の先生と弊社の保健師それぞれから日頃の産業保健活動での課題、疑問点や事例等を提示してもらい、それに対し皆で意見を交換するという形で行いましたが、思いのほか議論が活発に行われた結果、18時に開始して終了したのが20時半にまでなりました。実務的な話題が中心でしたが、こちらとしても若い先生方のさまざまな意見や思いを聞くことができ、大変有意義な会になりました。今後もしかるべき頻度で定期的に開催していきたいと考えています。出席いただいた先生方にこの場を借りてお礼を申し上げます。

ノーベル医学生理学賞

おはようございます、保健師の山本です。 昨夜発表になった北里大特別栄誉教授の大村智氏のノーベル医学・生理学賞の受賞、おめでとうございます。 大村氏(および米のウィリアム・キャンベル博士)の受賞理由は、「寄生虫によって引き起こされる感染症の治療の開発」。 70年代から各地で土を採取して微生物を分離・培養していた大村氏は、静岡県のゴルフ場周辺の土壌にいた新種の菌から、寄生虫に効果のある抗生物質「エバーメクチン」を発見した功績が評価されたとのことです。 このエバーメクチンをもとに開発されたのが、「オンコセルカ症(河川盲目症)」や「リンパ系フィラリア症(象皮病)」などを引き起こす寄生虫の駆除薬として普及した「イベルメクチン」。 実はこれ、犬を飼っている人には大切な薬です。 実は毎年お世話になっている(であろう)犬のフィラリア予防薬に含まれている成分が、何をかくそうこのイベルメクチンです。 ※調べたところ9種の薬にイベルメクチンが含まれていました。 私たちの身近な薬が普段何気なく歩いている土の中にいる微生物から生まれたと思うと、微生物の世界も奥が深いなと思います。 ちなみに、1グラムの土のなかには、約1億の微生物が存在するといわれており、その種類にも細菌(バクテリア)やカビなどさまざまなものがあります。 ちなみに、大村氏が発見した「エバーメクチン」を生産していたのは放線菌といわれる微生物です。 こうした土の中の微生物のおもな働きは、さまざまな生物の死骸や枯葉などを分解し、二酸化炭素などのガスや水、植物の成長に必要な養分に変えることであり、自然界はこうした微生物なしでは成り立ちません。 そして微生物の働きを利用して、化学肥料のかわりに、環境を汚さない有機物を利用する農法や、化学物質で汚染された土壌を再生する研究も進められています。 他にも、最近では腸内フローラ(腸内細菌叢)のバランスを改善する微生物が「プロバイオティクス」として注目を集めています。 心身の健康のためには、体の中や土の中で活躍してくれている微生物にも時には感謝しないといけないなと昨夜はニュースを見ながら思った私でした。

最近話題のアレ「乳がん」①

  保健師の宮本です。

めっきり冷え込んできましたね。

今の住まいで初めての冬を越した去年、あまりエアコンが効かずに毎日凍える思いだったことを思い出しました。

今年こそヒーターを買ってしまいそうです。

 

 さて、肝内胆管がんで亡くなった川島なお美さんや乳がんを公表した北斗晶さんなど、ここ数週間は「がん」の話題を耳にする機会が多かったように思います。

特に北斗さんは毎年検診を受けていたにも関わらず右乳房全摘、リンパ転移までしているということに衝撃を受けた方も少なくないはずです。

そこで数回に亘って「乳がん」をテーマにお話してみようかと思います。

 

 

Q.1 そもそも乳がんってなに?

 乳がんを説明する前に、その発生部位である「乳房」について知る必要があります。

乳房は、出産時に乳汁を分泌する大切な役割をもつ皮膚の付属器官です。

その中には「乳腺」と呼ばれる腺組織と脂肪組織、血管、神経などが存在しています。

乳腺組織は15~20の「腺葉」に分かれ、さらに各腺葉は多数の「小葉」に枝分かれしています。

小葉は乳汁を分泌する小さな「腺房」が集まってできています。

各腺葉からは乳管が1本ずつ出ていて、小葉や腺房と連絡し合いながら最終的に主乳管となって乳頭(乳首)に達します。

 

 乳がんはこの乳腺を構成している乳管や小葉の内腔(内側)を裏打ちしている上皮細胞から発生します。

がん細胞が乳管や小葉の中に留まっているものを「非浸潤がん」あるいは「乳管内がん」乳管や小葉を包む基底膜を破って外に出ているものを 「浸潤がん」といい、この他、非浸潤がんが乳管が開口している乳頭に達して湿疹様病変が発生する「パジェット病(Paget病)」の3種に大別されます。

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Q.2 治療しないとどうなる?

 治療をせずに放っておけば、↑の図のように周囲の組織に拡がり、リンパ管を通って脇の下(腋窩)のリンパ節や鎖骨の上のリンパ節、あるいは血液を通って骨・肺・肝臓などの臓器へ転移します。

その結果、命を脅かすことになります

このような事態を未然に、あるいは可能な限り防ぐためには乳がん検診によって早期発見に努め、できるだけ早く治療を開始しなければなりません。

 

Q.3 北斗晶さんは毎年検診を受けていたのに、どうして乳房全摘が必要になる程悪化してしまった?

 乳がんの治療方法は、以下の点から決められています。

 

■場所や個数、サイズ

 比較的切除しやすい場所で個数も少なくサイズも小さい場合は、部分切除と言ってその癌の周りをくりぬくような手術をします。

この場合、「必要な部分だけを切り取る」ことになりますので、大きな見た目の変化はありません。(乳房温存)

■リンパ節への転移

 がんは進行するに従ってその場所だけでなく、より遠くに広がろうとします。

乳がんの場合には腋窩リンパ節(脇の下)や、鎖骨上窩リンパ節(鎖骨の上)に転移することが多く、画像検査や組織検査で転移があるかどうかを決めます。

転移がある場合にはリンパ節も一緒に取ってしまう必要があるので、部分切除だけでは不十分です。

■年齢

 一般的に若い人の場合、なるべく乳房を温存するような処置を検討します。

また、高齢になる程癌の進行速度が落ちますので、切除範囲を狭くすることもあります。

■癌の種類

 治療の決定事項として一番大切なのが、がんの種類です。

女性ホルモンにどの程度依存しているか、ホルモン剤がどの程度使えるかによって手術で取るべき範囲が決まります。

ホルモンと関係なく成長する種類の癌は手術の後にホルモン剤の効果がありませんので、手術でがんをすべて取る必要があります。

 

 以上より、北斗さんの場合がんの中でも悪性度が高く進行が早いがんであったため、「乳房全摘出」という治療法になったと考えられます。

 

Q3. 毎年の検診だけでは不十分?

 基本的には毎年の検診で早期発見ができます

ただし北斗さんのように進行が早いものは検診を受けたときには癌が見つからなくても、次回検診までの間に乳房全摘出が必要なくらい進行してしまう場合もあります。

しかしながら、1年で全身に転移して手術ができない…といういわゆる「進行癌」になることは少ないです。

 

 

 次回は早期発見の要、乳がん検診について取り上げます。

お楽しみに!

 

参考 アストラゼネカ株式会社「乳がんJP」

   http://www.nyugan.jp/about/fact.html

女性の被液を想定してシャワーの設置場所を考えましょう

薬液に被液した場合、すぐに作業服を脱いで現場に備え付けられたシャワーで被液部を洗浄するのが原則ですが、特に女性が被液した場合、男女混在の職場ですと、作業服を脱ぐのをためらい、その場ですぐに洗浄出来ない状況になりかねません。緊急時に使用するシャワーの設置場所も女性の被液を想定して考える必要がありそうです。

早くもインフルエンザ発生

福岡県では9月に27件のインフルエンザの発生が報告されているようですが、うち22件が北九州市内で、すでに学級閉鎖も行われたようです。北九州市のインフルエンザの定点測定での数値は0.63で、流行の指標となる1までには達していませんが、場合によっては今月超える可能性もあり注意が必要です。それにしても例年になく早い時期での発生です。

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