服部産業医事務所の活動

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信【44】

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信 2021年4月5日付
【44】 新型コロナウイルス後遺症について

企業の経営者・担当者のみなさま、新型コロナウイルスに感染した後に、患者によっては急性期の症状が遷延する(いわゆる後遺症が残る)ことが分かってきております。今後、後遺症に悩む従業員が職場で発生する可能性もありますので、まずは現時点で分かっていることを整理しておきましょう。

1. 課題の背景:
新型コロナウイルスに感染した後、ほとんどの人は通常の健康状態に戻る一方で、回復した後も数週〜数ヶ月間様々な症状が続く人がいます。症状の程度にも個人差があり、中には従前通りの業務に就くことが困難なケースもあるかもしれません。また、どこに相談したらよいか分からず、問題を独りで抱え込んでしまっていることもあるかもしれません。
残念ながら、現時点では後遺症の原因は明確に分かっておらず、確立された治療法もないのが現状です。それ故に、職場での理解や支援が後遺症に悩む従業員にとって大きな助けになることもあります。今回は、後遺症について現時点で分かっていること、職場で実施可能と思われる支援につき説明します。

2. 企業でできる対策:
〇 後遺症について理解する
○ 後遺症の相談窓口を把握しておく
○ 後遺症に悩む従業員への配慮を検討する

2-1. 後遺症について理解する
□ 感染者の3人に1人に何らかの症状が後遺症としてみられる可能性がある
□ 症状によっては数カ月も遷延することがある
□ 軽症者、若年層においても後遺症が問題となる場合がある
□ できるだけ感染しないことが最大の後遺症予防策となる
後遺症として頻度が高い症状には、倦怠感、息苦しさ、胸の痛みや違和感、咳などがあげられます。それぞれの頻度や持続期間は資料1をご参照ください。症状によって持続期間にばらつきがありますが、倦怠感など6カ月も遷延する場合も実際にあるようです。また、新型コロナに感染した人の3人に1人が、少なくとも1つ以上の症状を後遺症として経験していることが国内外の報告で分かっており、後遺症も決して稀なことではないようです。
入院を要する重症の新型コロナ患者で後遺症がみられやすい傾向にありますが、入院していない軽症の人でも症状が続いたり、後になって症状が出てきたりすることがあります。また、20~30代の若い層も後遺症を有する割合は決して低くないことが国立国際医療研究センターの調査からも分かっており、若いから感染しても大丈夫とは言えなさそうです。現時点では、できるだけ感染しないように基本の感染予防策を続けていくことが最大の後遺症予防策となります。

2-2. 後遺症の相談窓口を把握しておく
□ 地域の後遺症専門外来、行政の相談窓口等の情報を把握しておく
前述のように、現時点では後遺症の原因は明確に分かっておらず、それぞれの症状に応じた対症療法が中心となります。医療機関で後遺症専門外来を設置しているところも増えてきました。また東京都では都立病院の患者支援センターに「コロナ後遺症相談窓口」を設置し、新型コロナウイルス感染症の治療や療養終了後も、呼吸の苦しさや味覚・嗅覚の異常などの症状がある方からの受診や医療に関する相談への対応を開始しているようです(資料3)。このような地域の相談窓口や専門医療機関の情報を職場で把握しておくことで、後遺症に悩む従業員が出た場合に専門医療機関につなげられる可能性が出てきます。

2-3. 後遺症に悩む従業員への配慮を検討する
□ 従業員本人の意向を踏まえながら、復職時期や復職時の就労条件を個別に調整する
□ 後遺症が長期間にわたり遷延する際の労務管理上の取り扱いをよく検討しておく
感染した従業員は、通常ですと「発症日から 10 日間を経過し、かつ症状軽快後 72 時間経過した場合」に職場復帰が可能となります。これは他の人への感染拡大防止の観点からの目安となりますが、10日間を過ぎても症状が残る場合に復職をさせてよいのか、職場でも悩ましいところかと思います。このような場合、保健所や(産業医契約のある事業場では)産業医等に相談することも一つの方法です。
また、感染した従業員本人が復職への不安を感じている場合などは、本人の意向を踏まえながら、職場復帰の時期や職場復帰時の就労条件などを個別に調整していくことも重要となります。例えば、倦怠感が著しい場合など、時短勤務や在宅勤務を一定期間行った上で、徐々に通常勤務に戻していくなどの対応が考えられます。
ただし、症状によっては数カ月に渡って遷延する可能性があります。この間、漫然と配慮が長期化する状況も好ましくなく、後遺症が長期化する際の労務管理上の取り扱いについてもよく検討しておく必要があります。例えば、配慮継続の必要性につき、定期的に主治医や産業医等の意見を聴くことなどがあげられます。また、メンタルヘルス不調やがんなど、すっきりと治らない病気の職場復帰支援の仕組みなども参考にできるかと思います(資料4、5)。これらの仕組みがない職場では、これを機に疾病からの職場復帰支援の仕組みを整備することをお勧めします。

3.. 関連情報リンク:
1) 忽那賢志. 新型コロナの後遺症Q&A どんな症状がどれくらい続くのか(2021年1月)
https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20210131-00220218/
2) iCDC(東京都公式). 後遺症の恐怖―コロナのその後について、大曲先生にお聞きしました。
https://note.com/tokyo_icdc/n/n18515b0f8541
3) 東京都新型コロナウイルス感染症対策本部. 都立病院患者支援センターへの「コロナ後遺症相談窓口」の設置についてhttps://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2021/03/29/43.html
4) 厚生労働省. 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/101004-1.pdf
5) 厚生労働省. 事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000760961.pdf

文責:今井 鉄平(OHサポート株式会社)

動画を下記で配信しております。
〇第42回動画「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)の活用 (その2)」
https://www.youtube.com/watch?v=wb_6EbY0IPA

中小企業のための新型コロナウイルス対策ガイド

産業医の有志の先生方の配信する
企業向けの新型コロナ対策情報を共有させて頂いておりますが
これまでの記事の抜粋版が
中小企業のための新型コロナウイルス対策ガイドとして
配信されております。
社内でぜひご活用ください。

緊急事態宣言解除などによる再流行の波や
変異株の感染者増による入院ベッドの不足が
予想されております。
ワクチン接種の順番が来るまでは
まだまだ時間がかかりそうなので
決められたルールを淡々と守って過ごしましょう。

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信【43】

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信 2021年3月22日付
【43】リバウンドを防ぐために

経営者・総務人事担当者のみなさま、一部地域に発出されていた緊急事態宣言が解除されました。今後も感染者が再び増加して三度の緊急事態宣言とならないよう、対策が必要です。

1. 課題の背景:
新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が解除されると、緊張感が緩み、感染防止策が疎かになってしまう可能性があります。緊急事態宣言が解除される前でも、新規感染者数の減少スピードが鈍化するなど下げ止まりやリバウンドの懸念があります(資料2)。ずっと緊張して、抑制して生活を続けることは困難ですから、感染を広げないように工夫をして気持ちを緩め、リラックスすることが必要です。

2.企業でできる対策
○ 外出はすいた時間・場所を選び、混雑した場所での食事を控える
〇 歓送迎会は控え、花見は宴会なしにする
〇 組織のトップが方針を示し、リモートワークをする

1) 外出はすいた時間・場所を選び、混雑した場所での食事を控える
密な場所では感染リスクが高まることを再確認し、混雑した場所を避けること、特に食事を控えるように社員に呼び掛けましょう。
どうしても会食をする場合は、以下のことを守るよう従業員に促しましょう(資料3)。
□普段から一緒に過ごす人と少人数、短時間にする
□会話の際はマスクを着用し、大声での会話を避ける
□家族や同居人以外と会食する場合は4人までとし、様々な人と、頻繁に会食することは避ける
□「飲食業に求められる対策(※)」を行っている店舗を選ぶ
□のどが痛い、咳が出るというような体調不良が少しでもある場合は会食への出席を取りやめる

2) 歓送迎会は控え、花見は宴会なしにする
緊急事態宣言が解除されても、新型コロナウイルス感染症がなくなったわけではありません。特に人が大勢集まる場では、声が大きくなったり、会場内で動き回ったり、マスクの着用が疎かになるなどリスクが高まります。
□宴会以外の歓迎や送別の気持ちを表す場や機会を設けるよう工夫する
□花見はレジャーシートを広げて集まるのではなく、ゆっくりと歩きながら楽しむ

3) 組織のトップが方針を示し、リモートワークをする
緊急事態宣言後もできるだけリモートワークを継続しましょう。リモートワークでもコミュニケーション不足を補えるよう、定期的にミーティングを行うなどの工夫をしましょう。
□在宅勤務やローテーションで出勤するなど、「出勤者の7割削減」を目指すことも含め、接触機会の低減を図る
□職場に出勤する場合でも時差出勤や自転車通勤等人との接触を低減する
□職場での感染防止対策(手指消毒、マスクの着用、適切に換気を行い密を避けるなど)を徹底し、特に「居場所の切り替わり」(休憩室、更衣室、喫煙室等)で感染対策が疎かにならないよう注意する

※【飲食業に求められる対策】
Ⅰ.店内の二酸化炭素濃度を測定し、一定水準(目安1,000ppm)を超えないように換気や収容人数を調整する、
Ⅱ.1グループは同居家族以外ではいつも近くにいる4人までにする、
Ⅲ.①同一グループ内の人と人との間隔及び、②他のグループのテーブル間の距離を一定以上(目安1~2m)に確保する。なお、距離の確保が困難な場合には、飛沫の飛散防止に有効な遮蔽版(アクリル板等)等を設置するなど工夫する。
Ⅳ.店内で会話の声が大きくならないようBGMの音量を最小限にするなど工夫する
Ⅴ.①席の近くに消毒液を設置。②店舗入口等の掲示にて食事中以外のマスク着用及び体調不良者の入店お断りをお願い。③体調の悪い人、感染や濃厚接触の可能性のある人がキャンセルできるような方針を業界団体で検討。

3.関連情報リンク・参考情報:
1) 緊急事態宣言解除後の地域におけるリバウンド防止策についての提言(新型コロナウイルス感染症対策分科会)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/ribaundoboushisaku_teigen.pdf

2) 直近の感染状況の評価等(第26回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料1)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000748315.pdf

3) 新型コロナウイルスへの感染リスクの考え方(高山義浩)
https://news.yahoo.co.jp/byline/takayamayoshihiro/20201220-00213483/?fbclid=IwAR14RA0rwfGnpkOx-tGuopldAoPNznqfWBJwWF5tVo_d44coVKAqa8vyW74
4) 【識者の眼】新型コロナ、緊急事態宣言の解除が見える中で検討すべき課題(和田耕治)
https://medical-saponet.mynavi.jp/news/data/detail_2511/

5) 【識者の眼】飲食の場面におけるコロナの感染症対策(和田耕治)
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=16662

文責:櫻木 園子(一般財団法人京都工場保健会)

動画を下記で配信しております。〇第41回動画「新型コロナウイルスワクチン情報」
https://youtu.be/G-agwuJfESk

新型コロナウイルス対策事例

こんにちは、保健師の倉です。
企業向けの新型コロナ対策情報を
時々共有させて頂いておりますが
日本産業衛生学会・中小企業安全衛生研究会・新型コロナ対策WGが
コロナ対策事例集の配信も始めたそうです。
http://www.oh-supports.com/case.html

流行当初はマスクや消毒薬が不足していたなぁ…
PCRの偽陽性・偽陰性も浸透していなかったなぁ…と
今となっては懐かしさを感じる事例もございますが
隙間時間に ご覧になっては いかがでしょうか。

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信【41】

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信 2021年2月26日付
【41】 新型コロナウイルスワクチン情報

経営者・総務人事担当者のみなさま、新型コロナウイルスワクチンに関する情報を従業員に周知されているでしょうか?

1.課題の背景:
新型コロナウイルスのワクチンが国内承認され、新型コロナウイルスの診療に当たる医療従事者から接種が開始され、接種回数は国内で1万回を超えました。一般労働者へ接種機会が来るのはまだ先になると思われますが、従業員が正しい情報に基づきワクチン接種を検討できるよう情報提供を行いましょう。

2.企業でできる対策:
〇 新型コロナワクチンの効果について情報提供する。
〇 新型コロナワクチンの副反応についても情報提供する。
〇 新型コロナワクチンに関して信頼できる情報源を紹介する。
〇ワクチン推奨における留意事項を念頭におく。

1) 新型コロナワクチンの効果について情報提供する。(※ワクチンの仕組みは後述)
□ 新型コロナウイルスワクチンは2回の接種によって、約95%の有効性で、発症を防ぐ効果が認められている(インフルエンザワクチンの有効性は約40-60%)

2)新型コロナワクチンの副反応についても情報提供する。
□ どんなワクチンでも、副反応が起こる可能性がある。
□ 新型コロナワクチン接種後に報告される頻度の多い事象は、接種部位の痛み約80%、疲労・だるさ約60%、37.5度以上の発熱約33%など(接種後3日以内に出現し1-2日以内に治まる)
□ アナフィラキシー症状の発生頻度は100万回に2-5回(インフルエンザワクチンでは100万回に1.4回、1日当たりの交通事故負傷:100万人に11人)
□ アナフィラキシーを発症する人の9割は15~30分以内に発症。日本での接種では、ワクチン接種後15~30分経過を見て、万が一アナフィラキシーが起きても医療従事者が必要な対応を行う。
□ アメリカでは5千万人以上が接種しているが、ワクチンによる死亡を警戒するような事象は生じていない。

新型のワクチンであるmRNA(メッセンジャー アールエヌエー)ワクチンについて
日本で承認されたファイザー社の新型コロナワクチンは、mRNAという遺伝情報を用いた新しいタイプのワクチンです(次に承認されると思われるモデルナ社も同様)。従来の製法と比べてワクチンの設計、製造が早く、流行から1年という短期間で実用化されました。
ワクチンで免疫を付けるには、ウイルスの表面にあるタンパク質が必要です。インフルエンザワクチンはタンパク質そのものを注射しますが、新型コロナワクチンはタンパク質の設計図であるmRNAを注射し、人の細胞の中でタンパク質を作らせ免疫を付けるタイプのワクチンです。
 遺伝情報を用いた新しいタイプのワクチンではあるが、安全性は理論的にも、臨床試験でも確認されています。
□ mRNAから作られるのはウイルスの一部分のタンパク質であり、ウイルスが体内で作られることはない。作られたタンパク質も数日で分解される。
□ mRNAは体内で使用された直後から速やかに分解され、体に残らない。
□ mRNAは遺伝情報を含んでいるが、人間のDNAに取り込まれることはない。
□ ワクチンの実用に必要な臨床試験は省略されることなく、十分に実施されている。

3) ワクチンに関して信頼できる情報源を紹介する。
 ワクチンに関しては、そのメリット、デメリット、接種の対象者など様々な情報が飛び交うことになると予想されます。SNSやワイドショーなどでは、不確かな情報が発信、拡散されやすく注意喚起しましょう。
□ 公的機関や専門家が提供している情報を元に判断するよう周知する。
・新型コロナワクチンについて(首相官邸)
 ワクチンの有効性、安全性についての情報などが簡潔に掲載されている。
・新型コロナワクチンについて(厚生労働省)
 ワクチンについてより詳しい情報が掲載されている。
・こびナビ
 新型コロナウイルスの研究や患者の診療に取り組む医師が、ワクチンの効果や副反応などの最新情報を提供するインターネットのサイト。ワクチンを接種した医療従事者による体験記も掲載。

4) ワクチン推奨における留意事項を念頭におく
 前述の通りどんなワクチンでも、副反応が起こる可能性があるため、接種の判断は各個人がメリットとデメリットを勘案して行うべきです。また、ワクチン接種後も100%感染しないわけではありません。以下の留意事項を念頭において情報提供をしていきましょう。
□ 引き続き、マスク、手洗い、ディスタンスといった感染対策は継続する。
(ワクチンを受けていない人にうつさないためにも)
□ ワクチンの接種はあくまで個人の意思で行うもので、会社として接種を強制しない。
□ ワクチンの接種状況は個人情報なので、社員に申告を強要しない。
□ ワクチン接種をしない社員に対し不利益取り扱いをしない。

3.関連情報リンク:
(1)新型コロナワクチンについて皆様に知ってほしいこと(首相官邸)https://www.kantei.go.jp/jp/content/20210219vaccine.pdf
(2)新型コロナワクチンについて(首相官邸)
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/vaccine.html
(3)新型コロナワクチンについて(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_00184.html
(4)こびナビ
https://covnavi.jp/
(5)アメリカの接種状況
https://covid.cdc.gov/covid-data-tracker/#vaccinations
(6)新型コロナワクチンを受けた後の注意点
https://www.mhlw.go.jp/content/000738739.pdf

文責:守田 祐作(産業医科大学 健康開発科学) 動画を下記で配信しております。

〇第39回動画「まん延期における濃厚接触者追跡調査の留意点」

https://www.youtube.com/watch?v=Om4bBIYX7rQ

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信【40】

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信 2021年2月12日付
【40】 マスクの使用方法を見直しましょう

経営者・総務人事担当者のみなさま、ついついマスクの素材ばかりに目が行きがちですが、実はマスクの使用方法も大事です。今一度、マスクの使用方法を見直しましょう。

1. 課題の背景:
新型コロナウイルス感染症は、会話の際などに出る飛沫によって感染が広がるため、飛沫防止対策としてマスク装着はとても重要です。マスクの素材別のシミュレーション結果が報道されてから、マスクの素材を気にする人が増えてきましたが、絶対に不織布マスクでなければいけないということではありません。場面に応じてマスクを選ぶことは可能です。また、どんなマスクも適切に着用していなければ性能は発揮されません。改めてマスクの正しい使用方法について啓発を行う必要があります。

2.企業でできる対策
○ マスクの性能について理解する
○ 場面にあったマスクを選択する
○ 正しいマスクの使用方法を今一度確認する

1)マスクの性能について理解する
報道されたマスクの素材別のシミュレーションでは、不織布マスクを着用した場合、飛沫の吐き出し量はマスク非着用時の20%程度、飛沫の吸い込み量はマスク非着用時の30%程度に抑制できるとの結果でした。また、ウレタンマスクや布マスクは、不織布マスクよりも性能が低いとの結果でした。これらの性能を理解した上でマスクを選択する必要があります。フェイスシールドやマウスシールドは、吐き出し・吸い込みともほとんど抑制できないとの結果でしたので、基本的には感染防止対策としては用いない方がよさそうです。
<図省略:OHサポート株式会社HPに完全版を掲載しておりますのでご参照ください>

2)場面にあったマスクを選択する
次の場面では、感染リスクが高まりやすいので、不織布マスクを選択することが勧められます。
・電話や会議などで声を出すような業務
・3密環境を回避できない場面
・高齢者と接する介護業務
・不特定多数の人と接する可能性のある業務

一方で、次のような場面では、比較的感染リスクが高くないため、布マスクやウレタンマスクでも構わないでしょう。
・ほとんど声を発しない業務
・十分な換気・周囲との距離が確保できている場合
・屋外で周囲との距離が確保しながらスポーツを行う場合

3)正しいマスクの使用方法を今一度確認する
いくら性能がよくても正しい使用法を守らないと効果が発揮できません。マスクを装着していても、鼻が出ていたり、顎の下まで覆えていないと飛沫が拡散してしまいます。そのため、使用方法について以下の点を今一度確認し、社員にも周知徹底することが大切です。また、ウレタンマスクは繰り返し洗うことで見た目がきれいでも劣化してしまいます。多くの製品で洗濯回数に制限を設けていますので、説明書きの回数を守って交換するように呼びかけましょう。
□適切なサイズのマスクを用い、鼻や顎の下までマスクで覆う
□鼻に沿ってノーズピースを折りフィットさせ、隙間がなくすよう装着する
□マスクを装着中はフィルター部分には触れない。(触れたときは手を洗う)
□外す際には、ゴムひもを持って外し、ビニール袋や蓋のついたゴミ箱に捨てる。

4.関連情報リンク・参考情報:
1) 国立大学法人豊橋技術科学大学 Press Release2020年10月15日
https://www.tut.ac.jp/docs/201015kisyakaiken.pdf
2)新型コロナウイルス感染症の予防 啓発資料 (厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00094.html
3)ウレタンマスクはNG? 着用批判に専門家くぎ―「洗い過ぎ」には注意を
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021020400191&g=soc
4)新型コロナ予防【マスク・フェイスシールド・手袋】どう使う?(坂本史衣)
https://news.yahoo.co.jp/byline/sakamotofumie/20200607-00182194/
5)新型コロナ対策  フェイスシールド・マウスシールドってどうなの?(坂本史衣)
https://news.yahoo.co.jp/byline/sakamotofumie/20201012-00202626/
6)MINISTRY OF HEALTH SINGAPORE. GUIDANCE FOR USE OF MASKS AND FACE SHIELDS
https://www.moh.gov.sg/news-highlights/details/guidance-for-use-of-masks-and-face-shields

文責:五十嵐 侑(東北大学大学院 医学系研究科 産業医学分野 大学院生)

動画を下記で配信しております。
〇第38回動画「飲食店を利用する際に注意したいこと」
https://www.youtube.com/watch?v=UQrpKpXzFec

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信【39】

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信 2021年1月25日付
【39】 まん延期における企業内濃厚接触者調査の留意点

企業の経営者・担当者のみなさま、新型コロナウイルスのまん延期において、これまでとは異なる状況が起きつつあります。特に企業内で濃厚接触者調査を行う場合、これまでとの違いに留意しながら対応を進める必要があります。

1. 課題の背景:
本情報配信の第32回「企業における濃厚接触者調査の留意点」でも、医療機関で従業員が新型コロナウイルス感染症と診断された場合、感染症法に基づき管轄の保健所に報告され、接触確認の調査及び濃厚接触者への対応が行われること、そして企業としても調査への協力を求められることにつき述べました。しかしながら、まん延期において、神奈川県に代表されるように、濃厚接触者調査の対象を重点化し、一般企業等での調査は行わない自治体も出てきております。また、感染者数の拡大が続く中、企業内で感染者が出るリスクは今まで以上に高まっております。
企業内濃厚接触者の調査を保健所が行わなくなったからといって、企業として何もしない訳にはいきません。ただ、これまで保健所が担っていた機能を、企業がそのまま担うということも難しいことと思われます。産業医等の産業保健専門職と契約をしている事業場においては、専門職に調査の進め方につき相談することも可能です。しかしながら、多くの企業ではそのような連携が持てていないことと思われます。そこで、ここでは専門職との連携のない小規模事業場を想定して、まん延期に企業が行うべき対応について説明します。

2. 企業でできる対策:
〇 感染拡大を最小限に抑える対策を徹底する
○ 濃厚接触者を特定する
○ 特定した濃厚接触者への対応を行う

2-1. 感染拡大を最小限に抑える対策を徹底する
□ 症状がある従業員には休んでもらう
□ 休憩・昼食時も含めてマスクの着用を徹底する
□ 最低1m以上の身体的距離を確保する

職場で最初に感染が明らかになった人は、必ずしも最初に感染した人とは限りません。職場ですでに感染が広がっている可能性もありますので、まず実施すべきことは周囲の人の体調確認になります。この段階で症状がある従業員がいれば、すぐに休んでもらうようにしましょう。そして、医療施設に連絡をとり、医師の判断を仰いで行動するよう伝えましょう。
また、職場での感染拡大を最小限に抑えるために、「マスク着用の徹底」、「身体的距離の確保」を強化することも大事です。特に、休憩や昼食時などを含め、マスクを外して会話することのないように徹底しましょう。ちなみにこの二点は次項で述べる濃厚接触者特定の目安となるものです。企業内で感染者が出ても、日頃からの感染防止対策により濃厚接触者がゼロであれば、事業への影響を最小化することができます。
次項から述べる濃厚接触者対応については、「とてもそこまで手が回らない」「保健所と同じようなことはできない」という企業もあることでしょう。そのような企業も含めすべての企業で、ここで述べた『感染拡大を最小限に抑えるための対策』は最低限実施しておきたいことと言えます。

2-2. 濃厚接触者を特定する
<濃厚接触者を特定する目安>
感染者の発症2日前~感染が確定するまでの間に、
□ 感染者と同居あるいは1時間以上の接触(車内、航空機内等を含む)があった者
□ マスクなしで 1 メートル以内、15 分以上会話があった者(会食等を含む)

従業員の感染が確定した場合、まずは上記目安に該当する従業員や関係者(社外を含む)がいないかを、感染者本人に無理のない範囲でリストアップしてもらいましょう。また、濃厚接触が考えられる従業員や関係者を特定していくのに、誰が感染したかを知らせる必要が生じますので、関係者に名前を開示することにつき本人の了解を求めておきます。
なお、接触の調査は感染拡大防止のためにお願いして行っているのであり、対象者には調査協力への感謝をもって接するようにしましょう。くれぐれも感染したことを責めることがないよう注意しましょう。また、従業員の行動を追うのは「業務の範疇」にとどめ、休みの日や就業時間外に社内外の関係者以外と何をしていたのかなど、業務の範疇外の行動の確認は行わないようにしましょう。
その後、リストアップされた濃厚接触が疑われる従業員にヒアリングを行い、前述の目安に該当することが確認できた者を濃厚接触者と特定します。なお、担当者も従業員も不安を感じることから、つい対象者を広範囲に広げがちですが、対象者の家族も含めて影響も大きくなりますので、なるべく上記基準の範囲内で特定するようにします。

2-3. 特定した濃厚接触者への対応を行う
□ 最後の接触から14日間の健康観察と自宅待機を求める
□ 無症状者に自費PCR検査の受検を求めない
□ 社外の濃厚接触者と連絡をとり、状況を伝える

濃厚接触者と特定した従業員については、感染者との最後の接触から14日間、健康観察と自宅で過ごすことを求めます。この間に症状があれば速やかに会社に報告するとともに、医療機関に電話連絡の上で受診するよう促します。
なお、会社として自費PCR検査を実施するべきか非常に関心の高いところかと思いますが、検査を実施してたとえ陰性であってもそれで感染していないことを証明するものではありません。企業で費用負担する場合でも、症状がない従業員に検査の受検を無理に進めないようにしましょう。
自宅待機期間はなるべく在宅勤務の扱いとすることが望まれます。在宅勤務ができずに休業の扱いとする場合は、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当する可能性があり、休業手当を支払う必要が出てきます。
感染者との接触はあったものの特定対象外となった従業員に対しては、健康観察と感染対策を強化する程度に留めましょう。自宅待機は求めないものの、少なくとも最後の接触から14日間は、濃厚接触の目安に該当するような行為(会食などマスクを外した状態で会話するなど)を控えるように促しましょう。
社外に濃厚接触が疑われる関係者がいると分かった場合は、当該者に速やかに連絡をとり、状況を伝えるようにしましょう。当該者の扱いをどうするかは、当該者の所属する企業の判断に委ねることになります。

3.. 関連情報リンク:
1) 和田耕治「産業医のための、企業が自主的に『濃厚接触者』を特定する際の注意点」
日本医事新報社 Web医事新報 No.5032 【識者の眼】
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=15550
2) 吉川悦子、福元舞子、井口理、鈴木茜
保健師のための 積極的疫学調査ガイド[新型コロナウイルス感染症] 患者クラスター(集団)の迅速な検出に向けて 第2版(2020年12月24日)
http://www.zenhokyo.jp/others/doc/20201225-covid-02.pdf
3) 神奈川県
積極的疫学調査の重点化に関するQ&A(一般の方向け)
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/ga4/ekigakuchousa.html#%E5%95%8F4
4) 今井鉄平監修「自社内でコロナ陽性者が出たらどうしたらいい?取引先への報告や社員のケア、企業側が取るべき対応とは」 コロタツマガジン
https://i-goods.co.jp/covid/magazine/1244/

文責:今井 鉄平(OHサポート株式会社)

動画を下記で配信しております。
〇第37回動画「2021年に実施する健康診断の準備」
https://www.youtube.com/watch?v=6fOUN1hY5SI

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信【38】

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信 2021年1月11日付
【38】飲食店を利用する際に注意したいこと

経営者・総務人事担当者のみなさま、新型コロナウイルス感染者の増加が抑えられない地域が出ています。飲食店を利用することはリスクが高いと言われていますが、どこに問題があるのかを確認しましょう。

1. 課題の背景:
新型コロナウイルスは飛沫によって感染しやすいことがわかっています。どのように感染を防止すればよいかもわかってきました。しかし、新規感染者がなかなか減少しません。そのような中、首都圏での緊急事態宣言が発出されました。東京では飲食をする場面が主な感染拡大の要因となり、職場や家庭、院内・施設内の感染に繋がっていると考えられています(参考資料1)。これ以上の感染拡大を抑えるために、感染拡大地域では特に人が集まる飲食の機会を見直す必要があります。

2.企業でできる対策
○ 飲食の場において感染が起こる背景を理解する
〇 感染拡大の状況を判断し、飲食の場を設けてよいかどうかを判断する

1) 飲食の場において感染が起こる背景を理解する
新型コロナウイルスは飛沫によって感染しやすいことがわかっています。マスクを着用することで飛沫を防ぐことができますが、マスクを外す飲食の場で会話することで感染リスクが高まります。たとえ短時間であっても、少人数であっても、とくに感染が拡大している地域では「安全な会食」を行うことは困難であることを認識しましょう。

図)会食に関わるクラスターのイメージ例(参考資料2)
※下記URLのp.22、図4①になります。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/kongo_kento_12_2.pdf

図は、会食に伴うクラスターの事例です。複数の家族が集まって会食を行い、一部の家族で感染が拡大しております。マスクを着用せず、大きな声で長時間会話をしたり、密な状態になっていたことがわかっています(参考資料2)。飲食店においては、客と従業員の間での感染は少なく、感染者が同席することによって感染のリスクがより高くなります(参考資料3)。また、参加者が席を移動することにより感染がより多くの人に拡がった事例もあります。他に、家族の一人が会食に参加して感染し、家庭内での感染に広がった事例も報告されています。

2) 感染拡大の状況を判断し、飲食の場を設けてよいかどうかを判断する
下の図は新型コロナウイルスへの感染リスクの考え方を示しております(参考資料4)。同居の家族等、普段から一緒にいる人であれば外食してもそれほどリスクが高まることはないと考えられます。しかしながら、同居の家族以外との接点があると、その活動内容によって感染リスクは高まっていきます。

図)新型コロナウイルスへの感染リスクの考え方
※下記URL中に掲載されている図になります。
https://news.yahoo.co.jp/byline/takayamayoshihiro/20201220-00213483/?fbclid=IwAR14RA0rwfGnpkOx-tGuopldAoPNznqfWBJwWF5tVo_d44coVKAqa8vyW74

感染拡大が落ち着くまでは、飲食店の利用も含め、普段生活を共にする人以外との接触を極力避けることが大切です。地域の感染拡大が落ち着いている場合でも、感染リスクの高い行動を慎むよう努めましょう。

①感染拡大地域では、
□同居の家族等以外との飲食の機会を避ける
②感染拡大が落ち着いても、
□大人数、長時間の飲食店利用は控える
□社員同士で昼食を一緒に取るときも、マスクを外した状態で会話しないように注意する
□飲食店を利用する際は着席し、席の移動はしない
□少しでも体調の変化を感じるときは会合への参加を取りやめる

3.関連情報リンク・参考情報:

1) 直近の感染状況の評価等(第20回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料4)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000715536.pdf

2) クラスターの分析に関するヒアリング調査等の結果と今後に向けた検討(新型コロナウイルス感染症対策分科会事務局)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/kongo_kento_12_2.pdf

3) いわゆる「飲み会」における集団感染事例について(国立感染症研究所)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9941-covid19-26.html

4) 新型コロナウイルスへの感染リスクの考え方(高山義浩)
https://news.yahoo.co.jp/byline/takayamayoshihiro/20201220-00213483/?fbclid=IwAR14RA0rwfGnpkOx-tGuopldAoPNznqfWBJwWF5tVo_d44coVKAqa8vyW74

5) (12月時点)新型コロナウイルス感染症の″いまについての10の知識″(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/000712224.pdf

文責:櫻木 園子(一般財団法人京都工場保健会)

動画を下記で配信しております。
〇第36回動画「社内研修、採用イベント時の感染対策」
https://www.youtube.com/watch?v=c9BRibrGnZw

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信【37】

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信 2020年12月28日付
【37】 2021年に実施する健康診断の準備

企業の経営者・担当者のみなさま、そろそろ2021年に実施する健康診断(健診)の準備を始める時期です。もしもの場合を含めた留意点を確認しましょう。

1. 課題の背景:
本情報配信の第7回「健康診断の延期にまつわる考え方」では、2020年4月時点の情報をもとに、厚生労働省から発信されていた情報、またさまざまな制約のもとで健診を行う場合の優先順位や会場での留意点について解説しました。
その後5月に、日本全国の健診実施施設が加入する8つの団体が合同マニュアル「健康診断実施時における新型コロナウイルス感染症対策について」を公表し、新たな形での健診が定着しつつあります。そこで今回は、合同マニュアルの内容を踏まえて、2021年に実施する健診を準備する際の留意点を解説します。

2. 企業でできる対策:
○ 施設健診の場合、各施設の対策を確認し、実施時期をできるだけ分散させる。
○ 巡回型健診の場合、会場における時間と空間の「密」を避ける。
○ 予定どおり実施できなくなった場合に何をするか決めておく。

2-1. 施設健診
<健診施設に確認しておきたい8つのポイント>
□ 受診者の体調確認をどのように行っているか?
□ 受診者間、受診者と職員の距離の確保をどのように行っているか?
□ 室内の換気をどのように行っているか?
□ 受診者の「密集」を避けるため、1日の予約者数、予約時間等をどのように調整しているか?
□ 受診者を含む複数の人の手が触れる場所の消毒を行っているか?
□ 健診施設職員の体調確認をどのように行っているか?
□ 健診施設職員に新型コロナウイルス感染症の陽性者が生じた場合、どのように対応するか?
□ 受診者に新型コロナウイルス感染症を疑う検査結果が判明した場合、どのように対応するか?
本稿では、各従業員が施設を訪問して健診を受ける形態を「施設健診」と呼びます。
施設健診の場合、会場における感染防止策は施設側に委ねられます。合同マニュアルは「基本姿勢」「健診施設の受診環境の確保」「健診施設職員が感染源とならないための配慮」「緊急時の対応」「健康診断項目ごとの留意事項」から構成され、事実上の全国標準ですが、個別具体的な対策は健診施設によって違いがあっても不思議ではありません。合同マニュアルの内容から主なポイントを8つ抜粋しましたので(上記)、実際に健診を委託する施設がどのような対策をとっているか、一度は尋ねてみることをお勧めします。担当者が医学・医療に関する専門家でなくても、企業側が感染拡大防止を意識していることは健診施設に伝わります。

2-2. 巡回型健診
□ できるだけ広くて換気のしやすい会場を確保し、定員を設定する。
□ 体調不良などで予定日に受けられなかった人への代替案を準備しておく。
本稿では、健診施設のスタッフがバス等で事業場を訪問して健診を実施する形態を「巡回型健診」と呼びます。
巡回型健診における留意点として真っ先に挙げられるのは会場の確保です。各検査ブースだけでなく検査待ちの場所を含めて人と人との距離を確保できるか、マスク着用や仕切りの設置でそこにいる人からの飛沫拡散を抑えられるか、外気を取り入れて換気できるかを検討し、レイアウトを決定します。また、一度に会場に入れる人数、それを上回った場合の待機場所も決めておきます。
発熱や咳などの体調不良がある従業員は、健診の受診以前に出勤そのものを控えてもらいたいところです。ただし、巡回型健診の日程はどうしても限られるため、もし従業員にとって健診が「外せない用事」と思われてしまうと、無理に出勤するきっかけになってしまうおそれが想定されます。例えば「巡回型健診を受けられなかった人は後日の施設健診を案内する」などの代替案を準備した上で、体調不良時には出勤しないよう再周知しましょう。

2-3. 予定どおり実施できなくなった場合への備え
□ 有害業務に従事する者の健康診断を優先する。
□ 入手できる情報をもとに、就業上の措置の確認・見直しを行う。
数か月前から健診の準備をしても、実施が近づいた時期にその地域で感染が急激に拡大してしまった場合など、予定どおり実施できない事態も起こりえます。
労働安全衛生法第66条の5では、事業者に対して、労働者の健診結果と実情を踏まえた就業上の措置を義務づけています。ここでいう「就業上の措置」とは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮のように個人を直接対象とするものだけでなく、作業環境測定の実施、施設の整備のように職場環境を対象とするものの両方が含まれます。すなわち、労働安全衛生法に基づく健診は、働く人の健康と安全を守るための適切な配慮を主な目的として義務づけられています。
もし健診を実施できる日数および人数が予定よりも減ってしまった場合は、2020年6月頃まで各種の健診が延期されていたときの考え方を準用して、一定の有害業務に従事する労働者を対象とする特殊健診(有機溶剤、特定化学物質など)やじん肺健診(じん肺法)を優先して実施します。
さらに、前回までの健診結果あるいは傷病休職などの事情により、就業制限等(例:残業や深夜勤務の制限、車両・クレーン運転作業の制限)の対象となっている従業員については、健診が予定どおり実施できなくても、入手できる範囲の情報から措置内容の確認・見直しをしておきましょう。

3. 関連情報リンク:
1) 厚生労働省 2020年5月26日掲載
健康診査実施機関における新型コロナウイルス感染症対策について(情報提供)
https://www.mhlw.go.jp/content/000634010.pdf
2) 日本総合健診医学会 新型コロナウイルス感染防止への対応について
https://jhep.jp/jhep/sisetu/covid_19.jsp
3) 日本人間ドック学会 新型コロナウイルス感染症への健診の対応について(情報提供)
https://www.ningen-dock.jp/covid19_dock

文責:田原 裕之(産業医科大学 産業精神保健学)

動画を下記で配信しております。
〇第35回動画「コロナ禍における飲酒対策」
https://www.youtube.com/watch?v=v0ALkBhjiew

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信 【36】

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信 2020年12月14日付
【36】 社内研修、採用イベント時の感染対策

経営者・総務人事担当者のみなさま、社内研修、採用イベント等を行う際、感染対策は十分検討されているでしょうか?

1.課題の背景:
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、多人数が集まる社内研修、採用イベントは延期・中止されていましたが、最近は感染対策を講じながら実施されつつあります。しかし、感染対策が不十分だと、クラスター発生や多方面への感染拡大リスクがあります。感染対策について下記の項目を確認しましょう。

2.企業でできる対策:
〇 3密を回避できるよう開催方法を計画する。
〇 体調不良の参加者がいないことを確実にする。
〇 会話を最小限に、マスク着用、手洗い励行を参加者に実施させる。
〇 会場の換気・保湿と消毒を行う。

1)3密(密集、密接、密閉)を回避できるよう開催方法を計画する。
□ 現地に集合する人数を最小限に厳選する。
□ 参加者に県境を越える移動が発生する場合は、Web開催とする、県ごとの開催とするなど、参加者の移動が短くなるよう計画する。
□ できるだけWeb開催を検討する。集合研修とする場合は、参加者の席間隔を最低1mとり、近接した距離での会話や発声を伴う内容を避ける。
  □ 換気・保湿が十分に行える会場を確保する。

2)体調不良の参加者がいないことを確実にする。
□ 参加中および参加日以前14日以内には、感染流行地域への移動、3密を伴うような感染リスクの高い行動を取らないよう徹底させる。□ 以下の場合は、速やかに担当者へ連絡させ、参加を見合わせる(Web参加に切り替えられるとなおよい)。
①発熱・咳・咽頭痛・味覚障害などの症状がある場合
②濃厚接触者として外出自粛要請を受けている場合。
③同居家族や身近な知人に感染が疑われる方がいる場合
□ 開催中に体調がよくない場合(例:発熱・咳・咽頭痛・味覚障害などの症状がある場合)は、速やかに担当者へ連絡させ、参加を見合わせる(Web参加に切り替えられるとなおよい)。

3)参加中の会話を最小限に、マスク着用、手洗い励行を受講生に実施させる。
□ フェイスシールドやマウスシールドでは飛沫発生抑制は限定的であることから、マスク着用を原則とし(口元を見せる必要がある場合はWeb実施を検討する※)、会話は最小限とする。※Web実施も困難な場合にフェイスシールド等を考慮する。
  □ 場所を移動した際、休憩時間、特に食事前に手洗いを励行させる。消毒液の設置ができる場合は、こまめな手指消毒を励行させる。   
  □ 開催期間中の食事はできるだけ個別とすることがのぞましい。飲酒を伴う食事は自粛させ、一緒に食事をする場合は、座の配置は斜め向かいに、箸やコップの使い回わしを避ける。会話する時はなるべくマスク着用を心がけるよう注意する。

4)会場の換気・保湿と消毒を行う。
  □ 機械換気による常時換気。
  □ 機械換気が設置されていない場合は、室温が下がらない範囲で常時窓開け(窓を少し開け、室温は18℃以上を目安に)
□ 適度な保湿(湿度40%以上を目安に加湿器使用)
□ ペンなど物品の共用は避け、出入口、トイレなどのドアノブを界面活性剤入り洗剤またはアルコールで清拭する。

3.関連情報リンク:
(1)来年2月末までの催物の開催制限、イベント等における感染拡大防止ガイドライン遵守徹底に向けた取組強化等について(内閣官房) https://corona.go.jp/news/pdf/jimurenraku_20201112.pdf
(2)感染リスクが高まる「5つの場面」年末年始特設サイト
https://corona.go.jp/proposal/
(3)マスク等の効果について
https://youtu.be/jgsDZboag9s
(4)室内環境におけるウイルス飛沫感染の予測とその対策(課題代表者;理化学研究所/神戸大学 坪倉 誠)2020年8月24日 記者勉強会 発表資料スライド
https://www.r-ccs.riken.jp/outreach/formedia/200824Tsubokura/
(5)寒冷な場面における新型コロナ感染防止等のポイント
https://corona.go.jp/proposal/pdf/cold_region_20201112.pdf

文責:守田 祐作(産業医科大学 健康開発科学)
※本文章は、産業医有志グループ(今井・櫻木・田原・守田・五十嵐)で作成しました。和田耕治先生(国際医療福祉大学・公衆衛生学教授)のサポートも受けております。

動画を下記で配信しております。
〇第34回動画「職場クラスターを防ごう①」
https://youtu.be/3su_98IGfGI

お問い合わせフォーム
TEL:093-742-2204 受付時間:9:00~18:00
電話をかける