服部産業医事務所の活動

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信【27】

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信 2020年8月3日付
【27】 新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)の活用

企業の経営者・担当者のみなさま、接触確認アプリは利用者が増えるほど感染拡大防止に役立つようになります。個人情報・プライバシーの保護に配慮しつつ、自分たちのために、周りの人々のために、ぜひ活用しましょう。

1. 課題の背景:
医療機関で患者が新型コロナウイルス感染症と診断された場合、感染症法に基づき管轄の保健所に報告され、接触確認(contact tracing)及び濃厚接触者への対応が行われます。接触確認は結核や麻疹などを対象に昔から行われている手法で、患者が企業の従業員の場合、勤務先の健康管理担当者はほぼ確実に協力を求められます。また、担当者が一人一人の状況を確認・記録していく地道な作業であるため、時間がかかって対応が遅れたり、患者数が急激に増えて対応が追いつかなくなったりするおそれが生じます。これは日本に限らず世界共通の問題です。
そこで、世界中のスマートフォンの多くに搭載されている基本ソフト(Android)を開発するGoogleと、iPhone及びその基本ソフト(iOS)の製造元であるAppleは、共同で濃厚接触の可能性を検出する技術を開発し、5月下旬に世界各国の政府・公衆衛生当局向けに公開しました。
日本では、厚生労働省がGoogleとAppleの技術を活用したスマートフォン用アプリ(COVID-19 Contact-Confirming Application、以下「COCOA」)を開発しました。6月19日に初版が公開され、ダウンロード数は7月31日17時時点で約996万件に達しています。

2. 企業でできる対策:
○ 従業員にCOCOAの利用を推奨し、
「近接した可能性」を通知されたら健康管理担当者へ申し出るよう呼びかける
○ 従業員が新型コロナウイルス感染症の患者になった場合、「陽性登録」を勧める
○ 「近接した可能性」を申し出た従業員と患者になった従業員の
個人情報・プライバシーの保護について、ルールと運用に盛り込む

COCOAの利用目的は、新型コロナウイルス感染症の患者と接触した可能性を知ることで、保健所によるサポートが迅速に行われるようにすることです。利用者数が増えることで感染拡大防止につながることが期待されていますので、まずはできるだけ多くの従業員にCOCOAを利用してもらうことが大切です。任意の呼びかけに加え、業務用スマートフォンを支給していれば標準アプリとしてインストールしておく方法もあります。
その上で、もし従業員が患者と「近接した可能性」(〔参考1〕参照)を通知されたら、健康管理担当者に申し出るよう呼びかけましょう。健康管理担当者は保健所と連携して、濃厚接触者の観察又は検査といった対応が円滑にできるようになります。理想的には、スマートフォンを持つ従業員のほぼ全員がCOCOAを利用するようになれば、対応の対象範囲を聞き取りだけでなく客観的な裏付けをもって設定できるようになり、不確かな情報による過剰ぎみの対応(例えば、全員一律自宅待機で事業がストップする)を防ぐことが期待されます。
従業員が新型コロナウイルス感染症の患者になった場合、COCOAを利用していれば匿名で「陽性情報の登録(陽性登録)」ができるようになります。保健所から患者に登録方法と処理番号が案内されるはずですが、企業からも登録を勧めましょう。患者がはっきり記憶しておらず、聞き取りを中心とする接触確認では漏れてしまう社内外の濃厚接触者を確認できるなど、感染拡大防止に役立つことが期待されます。
上記の対策を進めるにあたり、「近接した可能性」を申し出た従業員や患者になった従業員の個人情報・プライバシーへの配慮は大前提です。例えば、該当する従業員について社内で伝える範囲は必ず本人に確認して同意を得る、同意を得ることが難しい場合には保健所を交えて相談することをルール化しておく方法が考えられます。COCOAそのものも個人情報・プライバシーの保護を重視した仕様(〔参考2〕参照)になっています。

〔参考1〕 COCOAの利用方法
□ AndroidスマートフォンとiPhoneに対応している
□ 設定した端末同士の接近を検知して記録する
□ 新型コロナウイルス感染症と診断された人が「陽性登録」すると
接近した記録のある端末に「近接した可能性」と次のアクションが案内される
COCOAを使える端末は、Android 6.0以上で動作するスマートフォンとiOS 13.5以上で動作するiPhoneで、2016年以降に発売された機種のほとんどが含まれます。公式アプリストア(Google PlayストアとAppleのApp Store)から無料で入手と更新ができます。
COCOAを起動し、利用を開始すると、他のCOCOA利用端末との接近(概ね1m以内で15分以上)を記録し、14日間保存します。
利用者が新型コロナウイルス感染症と診断され、COCOAで「陽性登録」の操作を行うと、接近した記録のある端末に「近接した可能性」のプッシュ通知が表示されます。通知された利用者は、風邪症状があるか、周囲に新型コロナウイルス感染症が疑われている患者がいるかを回答し、その内容に応じて帰国者・接触者外来の予約・受診案内か14日間の体調確認に進みます。

〔参考2〕 COCOAにおける個人情報・プライバシーの保護
□ 電話番号や位置情報は使わず、Bluetoothで接近した情報だけが記録される
□ 利用開始と「陽性登録」は、能動的に操作したときのみ行われる(オプト・イン)
□ 「陽性登録」は匿名で、接近した相手には誰なのか通知されない
□ 接近の記録は14日経過後に自動的に削除される
政府が個人の行動を監視するのではないか、「陽性登録」の操作をしたら誰かに知られるのではないかなど、個人情報・プライバシーに関する懸念については開発段階でかなり考慮されています。プログラミングの知識がある方であれば、公開されたソースコードを調べることもできます。
まず、GoogleとAppleが開発した技術は、個人の特定につながりやすい電話番号やメールアドレス、プライバシーに強く関わる位置情報は使わず、ワイヤレスヘッドホンなどに使われるBluetooth規格の無線通信を使って接近した情報だけが記録される仕組みになっています。
また、COCOAの利用開始と「陽性登録」は、いずれも利用者が能動的に操作したときのみ行われます(オプト・イン)。さらに「陽性登録」は匿名で、「近接した可能性」を通知された人には相手が誰なのか伝わらない仕様です。
接近の記録は14日経過すると自動的に削除されます。その前でも利用者がCOCOAの使用を中止することで削除が可能です。

3. 関連情報リンク:
1) 厚生労働省: 新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/cocoa_00138.html
2) 政府インターネットテレビ: 「新型コロナ接触確認アプリの紹介」篇
https://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg20904.html
3) AppleとGoogle、新型コロナウイルス対策として、濃厚接触の可能性を検出する技術で協力
https://www.apple.com/jp/newsroom/2020/04/apple-and-google-partner-on-covid-19-contact-tracing-technology/
4) Google: 濃厚接触の可能性を通知するシステム: 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の
拡大抑止に取り組む公衆衛生機関をテクノロジーで支援する
https://www.google.com/covid19/exposurenotifications/
5) ITmedia Mobile: 内閣府が語る「接触確認アプリ」開発の経緯
 「インストール義務化は信義則に反する」 (2020年7月31日)
https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/2007/31/news152.html

文責:田原 裕之(産業医科大学 産業精神保健学)
※本文章は、産業医有志グループ(今井・櫻木・田原・守田・五十嵐)で作成しました。厚生労働省新型コロナウイルス対策本部クラスター対策班・和田耕治先生(国際医療福祉大学・公衆衛生学教授)のサポートも受けております。

動画を下記で配信しております。
〇第25回動画「感染症対策と熱中症対策の両立」
https://youtu.be/j6ZfW2Q-Sw8

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信【26】

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信 2020年7月27日付
【26】 プライベートへの注意喚起(特に県境を越えた移動について)

経営者・総務人事担当者のみなさま、夏季休暇を控え、社員への感染拡大防止の注意喚起をしていますか?
緊急事態宣言が完全に解除され、人の移動、接触が増え、都心部を中心に新型コロナウイルス感染が再拡大してきています。社員が感染しないよう、感染拡大地域への出張のみならず、プライベートの行動についても注意喚起を行いましょう。

1.課題の背景:
都心を中心に再び新型コロナウイルス感染が拡大している中、緊急事態宣言明けと比べ、感染防御対策が緩んでいる方も出てきます。第一波の際、大都市から他地域へのヒト移動に伴い他地域での感染者数が増加しました。夏季休暇などで移動範囲、交流範囲が広がると社員が感染するリスクも高くなります。

2.企業でできる対策:
〇 従業員に向け「新しい生活様式」の徹底を改めて注意喚起する。
〇 感染拡大地域への出張は控えさせる。
〇 休暇時の旅行については、感染リスクをよく検討させる。
〇 旅行中は「新しい旅のエチケット」に沿った行動を取るよう注意喚起する。

1)従業員に向け「新しい生活様式」の徹底を改めて注意喚起する。
(ポイントを抜粋、詳細は参考情報(1)参照)
□ 人との間隔は、できるだけ2m(最低1m)空ける。
□ 会話をするとき、人との間隔が十分とれない場合は、症状がなくてもマスク着用。
□ 手洗いは30秒程度かけて水と石けんで丁寧に洗う(手指消毒薬の使用も可)。
□ 毎朝の体温測定、健康チェック。発熱又は風邪の症状がある場合は自宅療養。

2)感染が流行している地域からの出張、感染が流行している地域への出張は控えさせる。
 詳細は、第1回「遠距離出張を見直しましょう」(関連情報(2))を参照

3)休暇時の旅行については、感染リスクをよく検討するよう注意喚起する。
□ 感染が流行している地域からの移動、感染が流行している地域への移動は控える。
□ 旅行 の1~2週間前から感染リスクの高い行動(下記表参照)を取らない
□ 旅行する際は、下記の表を参考に、感染リスクが低くなるように計画する。
□ 帰省の場合、高齢者など会う人に重症化のリスクがあるかどうかも考慮する。

<旅行する時の検討事項> 参考情報(3,4)も参照

4) 旅行中は「新しい旅のエチケット」に沿った行動を取るよう注意喚起する。
(ポイントを抜粋、詳細は参考情報(5)参照)
 □ 毎朝の体温測定、健康チェック。発熱かぜ症状時は、旅行に行かない、帰宅する。
 □ 会話をするとき、人との間隔が十分とれない場合は、症状がなくてもマスク着用。
□ 交通機関内での会話は控えめにする。
 □ 食事中の会話も控えめに、会話は個室で楽しむ。
□ 不特定多数の触れる場所(手すり、エレベータースイッチ、ドアノブ)を触れた後は石鹸で手洗いする(手指消毒薬の使用も可)。
 □ おみやげ選びは、触れずに目で選ぶ。

3.関連情報リンク:
(1)新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」の実践例を公表しました – 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_newlifestyle.html
(2)企業向け新型コロナウイルス対策情報 第1回 遠距離出張を見直しましょう
https://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=1021774
(3)BuzzFeed News夏休みの旅行はどうすべき? 新型コロナ時代の旅行で考えておきたい7つのポイント
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-wada-11?ref=hpsplash&fbclid=IwAR3pXIe1R7Qa8N0a_PLOtoQDCYG3DkPhk1HFML3P8MqybKm9lFeKgrQze1o
(4)YAHOO!ニュース Go To トラベル 感染を広げないためには
https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20200724-00189644/
(5)新しい旅の エチケット – 国土交通省
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001349264.pdf

文責:守田 祐作(産業医科大学 健康開発科学)
※本文章は、産業医有志グループ(今井・櫻木・田原・守田・五十嵐)で作成しました。厚生労働省新型コロナウイルス対策本部クラスター対策班・和田耕治先生(国際医療福祉大学・公衆衛生学教授)のサポートも受けております。

動画を下記で配信しております。
〇第24回動画「職場の感染リスク管理~スイスチーズモデルで考えましょう!~」
https://youtu.be/SPe4wTbhg2I

 

 

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信【25】

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信 2020年7月20日付
【25】感染症対策と熱中症対策の両立

経営者・総務人事担当者のみなさま、今夏の熱中症対策は万全でしょうか?熱中症は重症化しうるものですが、適切な処置を行うことで予防することができます。熱中症による重篤な災害を防ぐためにも、感染症対策と熱中症対策をバランスよく行って両立しましょう

1. 課題の背景:
コロナ禍において、感染拡大防止のためにマスクを着用する機会が増えるなど、多くの方がこれまでと異なる生活環境下で夏を過ごしていることかと思われます。特に今夏において注意が必要なポイントとしては、「作業中のマスク着用」と「換気による室温上昇」の二点となるでしょう。暑熱環境下でのマスク着用など、熱中症対策と感染対策のいずれを重視すべきか現場で判断に迷うことも少なくないことが予想されます。

2.企業でできる対策
○  屋外で人と2m以上が確保できる場合にはマスクを外す
〇  やむなくマスクを着用する場合は作業環境や作業方法を工夫する
○ 屋内では感染リスクと熱中症リスクを勘案し、個別に対策の優先度を判断する
○  換気をする場合はエアコンで温度設定をこまめに調整する

1)屋外で人と2m以上が確保できる場合にはマスクを外す
高温多湿の条件下でマスクを着用すると熱がこもりやすくなり、熱中症のリスクを高めてしまいます。このため、屋外で人と2m以上が確保できる場合にはマスクを外すようにしましょう。対人距離が確保できるよう、以下のような作業方法の工夫も必要です。
□屋外での作業はなるべく1人で行う
□複数名で行う場合は持ち場を分担する

2)屋外で人と2m以上が確保できずマスクを着用する場合は作業環境や作業方法を工夫する
 マスクを着用する場合は、熱中症のリスク低減のため、作業環境の改善や作業負荷の低減ができないか検討しましょう。
□パラソルや傘、カーテンなどにより日陰を作る
□扇風機や送風機、ミストファンなどにより冷却する
□暑い時間帯には強い負荷の作業は避ける、作業の負荷を下げる
□暑い時間帯の作業を避ける

□休憩を多めに取る、水分補給を積極的に行うよう啓発する
□マスクを口元シールド(マウスシールド)に代替する
(補足)フェイスシールド使用について
フェイスシールドもタイプによっては、熱がこもって熱中症のリスクや、視界が遮られることによる転倒のリスクにも繋がりえます。フェイスシールドは眼からの飛沫感染防止には有効ですが、その意味ではマスクと保護メガネで十分な場合が多いです。オーバーな保護具は他の労働災害のリスクをあげてしまうのでご注意ください。

3)屋内では感染リスクと熱中症リスクを勘案し、個別に対策の優先度を判断する
屋内でも、熱源や太陽光、輻射熱などにより40℃近くになり、かつ、対人距離が確保しにくい現場もあります(例:建設現場や製造現場、入浴介助など)。このような場合は、「地域の流行状況」「熱中症のリスク」「マスク以外の代替策」などを考慮しながら、感染対策と熱中症対策の優先度を決めていくことが重要です。
□職場での対人距離や地域の流行状況を勘案し、個別に対策の優先度を判断する。
□労使協働で、感染リスクと熱中症リスクについて話し合う。

4)換気をする場合はエアコンで温度設定をこまめに調整する
新型コロナウイルス感染症のリスク要因の一つである「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気と、熱中症予防を両立するため、以下の点に留意してください。
□十分な換気量を確保する ※
□窓を開けて換気することで室温が28℃を超える場合は、エアコンの設定温度を下げる
□室温が高い場合は、窓を開ける時間や窓を開ける回数を減らし、エアコンや扇風機を
上手に活用する
※1.第10回の「窓の開かないビルにおける換気改善」参照 関連情報6)
※2. 1 時間に 2 回程度の数分間全開にすることが推奨されています。
   なお、一般的なエアコンでは換気は行えない点にもご注意ください。

3.熱中症に係りやすい人について
高齢者、負荷の高い作業、厚着での作業(タイベックや防火服など)、持病のある人、肥満者、体調不良の人などは熱中症をより発症しやすいので、より積極的な管理が必要です。

4.関連情報リンク・参考情報:
1)「新しい生活様式」における熱中症予防行動のポイントをまとめました(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_coronanettyuu.html?fbclid=IwAR0EbHlpTsbf0Y5oew2aijjSzI-0eVmp3Nrh3TDZF_FySHgX4k77vBYwARQ
2)2020年5月20日 「新型コロナウイルス感染症予防のための夏期における室内環境対策」 建築衛生分野の研究者からの報告
https://www.niph.go.jp/soshiki/09seikatsu/arch/COVID19_summer.pdf?fbclid=IwAR22ZigGuiGRWo6UvcEOiItQZjCuvrLZ9fZoQQhFoV2ALnLrd1hBLLhdq6I

3)職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000617721.pdf

4)製造業向け 熱中症予防対策のためのリスクアセスメントマニュアル(中央労働災害防止協会)
https://www.jisha.or.jp/research/pdf/201503_02_All_1.pdf?fbclid=IwAR2stGa865-bnCNe8hN8dyZdfQoKZclJB_HVbprC8o17mhRTUCeuZsJ3vaU

5)新型インフルエンザに備えるための食品産業事業者の事業継続計画策定のポイント(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/anpo/pdf/pdf/090622point.pdf?fbclid=IwAR2KkMEUUhwkrz58LkAW7UdsalSBNfy9IB83KiG6IZY0lvNFi9YkARVVshk

6)第10回企業向け新型コロナウイルス対策情報配信「窓の開かないビルにおける換気改善」(産業医有志グループ)
http://www.oh-supports.com/img/corona/pdf/010.pdf

文責:五十嵐 侑(東北大学大学院 医学系研究科 産業医学分野 大学院生)

※本文章は、産業医有志グループ(今井・櫻木・田原・守田・五十嵐)で作成しました。厚生労働省新型コロナウイルス対策本部クラスター対策班・和田耕治先生(国際医療福祉大学・公衆衛生学教授)のサポートも受けております。

動画を下記で配信しております。
〇第23回動画「PCR検査・抗体検査・抗原検査についての考え方」
https://youtu.be/4ZWs7ZDvCQY

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信【24】

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信 2020年7月13日付
【24】職場の感染リスク管理~スイスチーズモデルで考えましょう!~

経営者・総務人事担当者のみなさま、職場の感染対策は万全でしょうか?今回は職場の感染リスク管理について、スイスチーズモデル(スイスチーズをモチーフとしたリスク管理の考え方)をベースに考えてみたいと思います。

1. 課題の背景:
職場の中で、「マスクさえつけていれば社会的距離は不要だろう」、「社会的距離が確保できていればマスクは不要だろう」、「換気をしているから多少社会的距離が近くても大丈夫だろう」と言った声が出ていませんでしょうか。効果的な職場の感染リスク管理のためには、どこまでの対応をとればよいのでしょうか?
このような疑問に対して、スイスチーズモデルを基にした職場の感染リスク管理の考え方につき解説いたします。

2. 事業所でできる対策:
○ スイスチーズモデルについて理解する
○ 職場の感染リスク管理をスイスチーズモデルで考える
○ 職場の感染リスク管理につき、従業員に周知徹底する

1)スイスチーズモデルについて理解する(関連情報1,2)
スイスチーズというのは、チーズの中でも内部にボコボコと穴が開いているチーズのことで、スイスチーズモデルではそのチーズを薄切りにしたものを何枚も重ねた状態をイメージします。内部に穴が開いているとはいっても、その穴は不規則なものです。一つ二つを重ねたとしてもどこかの穴は重なるかもしれませんが、枚数を重ねるうちに隙間が埋まっていくため、徐々にその穴が最後まで通じる可能性は低くなるでしょう。
リスク管理においても同様に考えて、1つの考えに基づいた防護壁では事故(穴が最後まで通じてしまうこと)が起こる可能性が高くても、異なる視点からの防護壁を複数組み合わせることでその安全性は高まっていきます。1つでは完璧な防護壁はなくても、いくつも重ねることで完璧に近づいてくだろうというのがスイスチーズモデルです。

2)職場の感染リスク管理をスイスチーズモデルで考える(関連情報3)
それでは、職場の感染リスク管理をスイスチーズモデルで考えてみましょう。ここでは隙間が最後まで通じてしまう状況を職場の集団感染ととらえます。それを防ぐための防護壁として、「マスクの着用(Face Covering)」、「社会的距離の確保(Safe Distancing)」、「従業員の症状チェック(Symptom Checking)」、「定期的な職場の換気(Ventilation)」などを考えます。
 「マスクの着用」だけでも効果は高そうに感じますが、職場で終日過ごすうちに、いつの間にかずらしてしまったり、外してしまうこともあるでしょう。100%の着用を従業員に求めることは難しい部分もあるかと思われます。そこで、不適切なマスク着用による隙間を埋めるための別の防護壁が必要になるという訳です。
同様に「社会的距離の確保」だけでも効果は高そうですが、職場で終日過ごす中で常に2mの距離を保ち続けることは困難でしょう。何かの拍子に距離が近づくことは当然起こりうる話です。「従業員の症状チェック」でも必ずしも正しく従業員が症状を申告しない可能性、「定期的な職場の換気」でもうっかり換気をし忘れることなど、単独で隙間がない防護壁を期待することは難しいでしょう。
このようなことから、単独の対策だけで十分ということはなく、いくつかの対策を重ねていくことで職場の集団感染リスク管理がより効果的なものになる(隙間が埋まっていく)ということが言えるでしょう。
とはいうものの、やみくもに防護壁を重ねるのは避けた方がよい場合もあります。例えば、流行が落ち着いている地域において、マスクとフェイスシールドの着用を求める場合など、防護壁を重ねすぎることで熱中症など他のリスクを招いてしまうこともあります。状況に応じて重ねる防護壁の数や内容を検討してみることも重要と言えます。

3)職場の感染リスク管理につき、従業員に周知徹底する
 いくら経営者や人事総務担当者が職場の感染リスク対策を進めようとしても、肝心の従業員が感染リスク管理の考え方を理解してしないと隙間が大きくなってしまうかもしれません。筆者自身も嘱託産業医として契約企業での職場巡視を行う中で、打ち合わせなどで社会的距離が確保できていない状況、マスクを着用できていない状況を見かけることがしばしばあります。このような場面では、従業員が単独の対策を過信している状況(1.課題の背景で述べた状況)も垣間見えます。
 従業員の一人一人が感染リスク管理に対して共通の認識を持つことも、隙間を埋めていくのに非常に大事な要素となります。ぜひ今回のスイスチーズモデルも活用しながら、従業員に対して職場の感染リスク管理の考え方につき周知徹底していきましょう。

3.関連情報リンク:
1)「スイスチーズモデル」って知ってますか?(シンク出版)
https://www.think-sp.com/2011/02/10/%EF%BD%93wiss-cheese/
2)スイスチーズモデルで組織事故を考える(リスクの眼鏡)
https://www.risk-megane.com/office_risk/3430/
3)The CIC COVID-19 Safety Plan(Tim Rowe)  
https://docs.google.com/document/d/1sWKL4i_JCnmAgfhaE8VuMrcts2Z3kt7hRqlAZVE_9jA/edit

文責:今井 鉄平(OHサポート株式会社 代表・産業医)
※本文章は、産業医有志グループ(今井・櫻木・田原・守田・五十嵐)で作成しました。厚生労働省新型コロナウイルス対策本部クラスター対策班・和田耕治先生(国際医療福祉大学・公衆衛生学教授)のサポートも受けております。

動画を下記で配信しております。
〇第22回動画「鉄道における感染拡大防止」
https://youtu.be/MXmxBBI9UK8

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信【23】

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信 2020年7月6日付
PCR検査・抗体検査・抗原検査についての考え方

経営者・総務人事担当者のみなさま、PCR検査、抗体検査、抗原検査など各種検査についてメディアで取り上げられています。「従業員の感染状況をチェックするために、みんなに検査を受けてもらいたい」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。また、検査を実施する企業から「お客様の安心のために」という売り込みもあるかもしれません。安易に飛びつくのではなく、意義やコストなども踏まえて実施の是非を検討しましょう。

1. 課題の背景:
新型コロナウイルス(感染症(COVID-19)流行の初期には、診断確定のためのPCR検査がなかなか受けられない状況が続きました。緊急事態宣言の発出、解除を経て、経済活動再開を進める中で、また、プロ野球やJリーグでは選手や関係者全員にPCR検査を定期的に実施するというニュースもあり、新型コロナウイルスに感染していないことを確認したい、というニーズが生じています。
しかしながら、現時点ではまだ検査を受けたいと思う人がすべて検査を受けられる状況ではありません。また、一般的に、濃厚接触の可能性がはっきりしない無症状の人に検査を行うことは勧められていません。検査について正しく理解して実施することが重要です。

2. 企業でできる対策:
○ 一般的な検査の解釈のしかたについて理解する
○ それぞれの検査の意義・課題について正確な情報を得る
○ 企業で検査の実施を検討する場合は、産業医等の専門家に相談する
1) 一般的な検査の解釈のしかたについて理解する
□感染していない、あるいは感染力のないウイルスが残存しているだけでも陽性になることがある(偽陽性)
□ウイルスなどが存在していても検出できないことがある(偽陰性)ため、「陰性」だからといって新型コロナウイルスに感染していないことの証明にはならない

2) それぞれの検査の意義・課題について正確な情報を得る
PCR検査はウイルスの遺伝子(RNA)を増幅させることによってわずかなRNAでも検出できるものです。抗原検査はウイルスの一部を検出するもので、抗体検査はウイルスに対する体の免疫反応によって生じた抗体を調べるものです。
①PCR検査:
□PCR検査が陽性の場合はほぼ確実に新型コロナウイルス感染症であると診断できる(検査が陽性でウイルスのRNAが存在する確率は98%)
□PCR検査では、感染力のないウイルスが残存しているだけでもRNAを検出し、陽性になることがある(偽陽性)
□PCR検査が陰性でも、新型コロナウイルス感染を否定はできない
②抗原検査:
□抗原検査が陽性の場合には新型コロナウイルスに感染していると考えられる
□抗原検査は見逃し(偽陰性)の危険性があり、新型コロナウイルス感染を否定はできない(ウイルスが存在する場合に陽性となる確率は37~66%)
③抗体検査:
□感染してから抗体ができるまでには時間がかかるため(ウインドウピリオド)、感染していても抗体検査では陰性になることがある
□新型コロナウイルス感染症では、回復後早期に抗体価が減少するため、感染したことがあっても抗体検査では陰性になる可能性がある
□抗体検査が陽性だからといって、新型コロナウイルス感染症に対する抵抗力があるかどうかはわかっていない。地域でどれくらいの人が感染したかを調べる公衆衛生的に調査することは有用だが、1つの企業などで調べる意義は薄いと考えられる
□過去の一般的なコロナウイルスへの感染によっても抗体検査が陽性になる可能性があり、新型コロナウイルス感染症にかかったかどうかを確実に証明することはできない

<それぞれの検査の特徴>
PCR検査 抗原検査 抗体検査
感染の時期 現在 現在 過去
陽性の場合 感染している 感染している 他のコロナウイルス感染の可能性あり
陰性の場合 感染を否定できない 感染を否定できない 感染を否定できない
課題 結果が出るまでに時間がかかる 感染しているのに陰性になる割合が高い 感染していなくても陽性になることがある

企業で検査の実施を検討する場合は、産業医等の専門家に相談するPCR検査を感染が疑われる患者さんが受ける場合には本人負担はありませんが、企業で実施する場合には、医療機関にもよりますが1件3万円程度のコストがかかります。抗体検査、抗原検査は同様に1件7,000円~1万円程度のようです。
検査をして、もし陽性になった場合にはその人を隔離するのか、濃厚接触者を隔離するのか、という対応も決めておく必要があります。
また、検査をした時点で陰性であったとしても、その後に感染する可能性もあり、どのくらいの頻度で検査を行うかも検討する必要があります。
日本ではPCR検査の実施数が少ないという批判がありましたが、「受けたい人」全員が受ければよい、というものでもありません。検査の実施可能件数には限りがある中で、社会全体でどのように資源を配分すべきかについても考えることが必要です。

このように企業独自で検査を実施する際に考えておくべき課題がいくつもあります。企業で検査の実施を検討する場合は、事前に産業医等の専門家に相談することをお勧めいたします。
□企業で検査の実施を検討する場合は、産業医等の専門家に相談する
□感染防止のためには3密を避けること、こまめな手洗いが最も重要であり、人と近くで接する場合にはマスクを着用する

3. 関連情報リンク
1) Yahoo!ニュース 抗体検査・抗原検査・PCR検査 どう使い分ける?
https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20200517-00178720/?fbclid=IwAR1xb8geKqoCQGYf3VDcnguUJHs9jKBhPEO15wyPg9x1rOTXc027UV-ynvE

2) 厚生労働省. 新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html

文責:櫻木 園子(一般財団法人京都工場保健会 産業保健推進部)
※本文章は、産業医有志グループ(今井・櫻木・田原・守田・五十嵐)で作成しました。厚生労働省新型コロナウイルス対策本部クラスター対策班・和田耕治先生(国際医療福祉大学・公衆衛生学教授)のサポートも受けております。

動画を下記で配信しております。
〇第21回動画「飲食業における感染対策」
https://www.youtube.com/watch?v=MBynWgT6pjE

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信【22】

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信 2020年6月30日付
鉄道における感染拡大防止

鉄道を運営する、あるいは利用する企業の経営者・担当者のみなさま、不特定多数の人が利用する駅や車内でも感染拡大リスクを下げることは可能です。それぞれの立場で協力しましょう。

1. 課題の背景:
新型コロナウイルス感染症は人と人との接触を通じて拡大することから、満員電車を心配する声は根強いです。3月9日に政府の専門家会議が公表した考え方では、「満員電車では、①(換気の悪い密閉空間)と②(人が密集していた)がありますが、③(近距離での会話や発声が行われた)はあまりなされません。しかし、場合によっては③が重なることがあります。」と例示されました。
4月から5月にかけて、米国ニューヨーク州で行われた抗体検査では、公共交通機関で働く人の13.4%が陽性で、職種別の陽性率は駅員が17%、車掌が11%でした。日本国内では、乗務員(車掌)や駅員の感染例がいくつか報道されたものの、集団発生に至ったケース、乗客が濃厚接触者に該当したケースはほとんどないようです。車内や駅に不特定多数の人がいても、会話の相手が少なく、短時間であれば感染拡大のリスクがあまり高くならないことは対策のヒントにもなります。
5月には鉄道事業者向けのガイドライン第1版が、6月には利用者向けの呼びかけが、それぞれの関係団体から国土交通省の協力を得て公表されました。これらを踏まえて、鉄道事業者・利用者双方のポイントをまとめます。

2. 企業でできる対策:
○ 鉄道事業者は、利用者向けに、車内や駅での飛沫感染・接触感染の防止を図る。
○ 鉄道事業者は、従業員向けに、体調不良の状態での勤務、
職場を介した飛沫感染・接触感染の防止を図る。
○ 通勤や出張の利用者は、飛沫拡散防止と混雑緩和などに協力する。

2-1. 鉄道事業者が行うこと(利用者向け)
□ 車両と地域の特徴に応じて、ドア開放または空調・換気装置によりこまめに換気する
□ 乗客同士の距離を確保できるよう、混雑状況等の情報を提供する
□ キャッシュレス決済の利用を促すことで、自動券売機などに手が触れる機会を減らす
□ 車内と駅の定期的な清掃の中で、複数の人の手が触れやすい場所を消毒する
車内での飛沫感染防止策は、運行する車両と地域の特徴を考慮する必要があります。
通勤電車として比較的短距離の輸送を担う車両には乗降用ドアが1両の片側に3〜4か所ずつあり、悪天候で窓が開けられなくても数分ごとの停車時にドアが開くことで換気が行われます。ただし、地域によっては、冷暖房の効率を高めるため停車駅でドアが自動で開かず、乗降客がボタンを押した時だけ開く設定になっています。気候や利用動向を含めて設定変更をご検討ください。
新幹線など長距離輸送を担う車両の場合、気密性を保つため窓は開けられず、ドアは1両の片側に1〜2か所ずつで、停車間隔が濃厚接触の目安である15分を超えることも多くなります。このような車両では、定期的に整備を行い、空調・換気装置を確実に機能させることが大切です。
車内や駅における乗客同士の距離を確保するための取組としては、例えば利用者がスマートフォン等を使って、通勤電車では車両ごとの混雑状況について、新幹線などでは座席指定の状況について知ることができるように環境を整備することで、空いている場所へ誘導しやすくなります。
駅の窓口では、もともとアクリル板の仕切りがあればそのまま使えます。他には、待つ乗客の立ち位置の間隔を広げて指定し直すことなどが考えられます。ICカード等を用いたキャッシュレス決済も、現金、きっぷ類、自動券売機などを複数の人が触る機会を減らすことが期待できます。
車内・駅とも、接触感染防止のための消毒方法は、複数の人が触る手すりや機器を中心に、材質に応じて界面活性剤入りの洗剤、アルコール消毒液、次亜塩素酸ナトリウム溶液のいずれかを用いての拭き掃除が原則です。定期的な清掃に胃腸炎を起こすノロウイルスを念頭に置いた消毒を取り入れている場合、特に新しいことをする必要はありません。

2-2. 鉄道事業者が行うこと(従業員向け)
□ 風邪症状がある状態での勤務を避けるための呼びかけを繰り返し、
始業前点呼等でも確認する
□ 休憩所などで「3密」(密閉・密集・密接)と共有備品を減らす
体調不良の状態での出勤及び勤務を避け、安心して休めるようにすることは、新型コロナウイルスに限らず様々な感染症の拡大防止策としても、また作業安全と輸送安全の確保の観点でも大切です。従業員に周知した上で申告してもらうほか、運行乗務員など始業前点呼がある場合はそこでも確認しましょう。
運転士や駅員が宿泊勤務をする際の設備を含め、休憩所などで「3密」(密閉・密集・密接)になっていないか、複数の従業員が手を触れる備品がないか、見直しましょう。

2-3. 利用者が行うこと
□ 風邪症状がある時は、できるだけ利用を控える
□ マスクを着用し、会話は控えめにする
□ 車内の換気に協力する
□ 混雑を避けた時間帯・車両を利用する
従業員だけでなく利用者も、風邪症状が明らかな時は、できるだけ利用を控えましょう。
ほか3点は、鉄道連絡会と国土交通省による「お客様への3つのお願い」に沿って解説します。
まず、マスクの着用について、ここでの目的は声を出す時に飛沫を飛ばさないことですので、サージカルマスクやN95マスクである必要はなく、洗って再利用できる布マスクで構いません。
次に、車内換気に関しては、前述のように、車両や地域に応じて窓・ドアの開放と空調・換気装置を併用しています。また、同じ車内に様々な考えを持つ人が乗り合わせる公共交通機関でもありますので、窓や換気装置の設定を乗客の独断で変えることは控え、鉄道事業者の方針に意見や要望があれば然るべき窓口に伝えましょう。
最後に、混雑を避けた時間帯・車両の利用については、遠隔勤務や時差出勤ができるかどうかが強く関係します。従来あまり取り入れてこなかった企業においても、次の流行への備えとしても、適用範囲の拡大をご検討ください。

3. 関連情報リンク:
1) 新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症のクラスター
(集団)発生のリスクが高い日常生活における場面についての考え方」 (2020年3月9日)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000606000.pdf
2) YouTube – ニューヨーク州知事の発表(2020年5月9日)
https://www.youtube.com/watch?v=M5j05llc0Fw
3) 鉄軌道事業における新型コロナウイルス感染症対策に関するガイドライン(鉄道連絡会)
https://www.mintetsu.or.jp/association/news/2020/15261.html
4) JR東海 新型コロナウイルス感染症対策に関する取組み
https://jr-central.co.jp/notice/detail/_pdf/000040501.pdf
5) 国土交通省 鉄道利用者の皆様へ(新型コロナウイルス感染症対策の利用者向け情報)
https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_fr1_000062.html
6) 日本経済新聞 (2020年6月12日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60279930S0A610C2CE0000/

文責:田原 裕之(産業医科大学 産業精神保健学)
監修:川島 正敏(東海旅客鉄道 東京健康管理室)
※本文章は、産業医有志グループ(今井・櫻木・田原・守田・五十嵐)で作成しました。厚生労働省新型コロナウイルス対策本部クラスター対策班・和田耕治先生(国際医療福祉大学・公衆衛生学教授)のサポートも受けております。

動画を下記で配信しております。
〇第19回動画「映画館における感染対策」
https://www.youtube.com/watch?v=WsLF-8uANPI
〇第20回動画「在宅勤務者のメンタルヘルス対策②(不調のセルフチェック)」
https://www.youtube.com/watch?v=oSLsFfmXF3w

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信【21】

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信 2020年6月22日付

飲食業における感染対策

飲食業の経営者・総務人事担当者のみなさま、店舗での感染対策は万全でしょうか?
緊急事態宣言が解除され、飲食業も本格的に事業を再開し始めています。感染防止対策をしっかりと行っていることは顧客へのアピールにもなります。感染拡大を防ぐため、新しい生活様式に合わせたサービスの提供体制を整えましょう。

1.課題の背景:
飲食店では、食事中にはマスクができない、手で触れたものを口に運ぶ等、飛沫感染、接触感染リスクが高くなるため、感染対策が必要です。また、テイクアウト、デリバリーサービスを行う際には、食中毒についても注意が必要です。

2.企業でできる対策:
〇 「外食業の事業継続のためのガイドライン」等を参考に対策のチェックを行う。

「外食業の事業継続のためのガイドライン」、「東京都感染拡大防止チェックシート(レストラン、料理店編)」等を参考に対策の抜け漏れをチェックする。今回は主にレストラン、料理店を想定しポイントを記載します。

1)従業員の健康管理、教育
 □ 従業員には出勤前に検温を行わせ、発熱、かぜ症状がみられる場合は、勤務を見合わせ、必要に応じて医療機関に受診させる(受診の目安は関連情報の(4)を参照)。
 □ 店舗で行っている感染対策の意義について周知する。
 □ 従業員にマスク着用、手洗いの徹底を行わせる。フェイスシールドは、主に目粘膜からの感染を防止することが目的であることを理解し、必要な場合に使用する。
 □ 休憩時に対面で食事・会話をしないよう指導し、休憩室はできる限り換気を行う。

2)メニューの工夫
 □ 大皿メニューは個々に提供する形のメニューへ置き換える。 
 □ 入店人数を抑えるため、テイクアウト、デリバリーサービスも検討する。
 □ テイクアウト、デリバリーメニューは関連情報(5)を参考に食中毒に注意する。
 例)・調理済みの食品は、20℃~50℃の環境に置かれる時間が極力短くなるよう、10℃以下又は65℃以上での保存を行う
   ・速やかに喫食するよう口頭やシールの貼付等により情報提供する

3)店舗入り口での対策
 □ 利用者で熱がある者は入場をご遠慮いただくようお願い掲示を行う。
 □ 電話、オンラインでの日時指定予約等により混雑を回避する。または、整理券の配布や入場者数・滞在時間の制限等を行う。
 □ 行列整理や床の目印表示を行う。可能であれば、テイクアウト用の動線を分ける。
 □ 入手できればアルコール消毒液を入り口に設置する。
4)フロアでの対策
 □ テーブルは、できるだけ2m以上の間隔を空け横並びで座れるよう配置を工夫する。
 □ 扉や窓を開け、扇風機を外部に向けて使用するなど、30分に1回以上換気を行う。
 □ 窓が開けられないビル内の店舗等については、室内の二酸化炭素濃度の測定結果をビル管理会社に確認し、1,000ppmを超えている場合は換気設備の運用見直しを相談しましょう。過去の記事もご参照ください:関連情報(6)
 □ 調味料・冷水ポットなど複数の人が触れる物品を極力減らし、こまめに消毒する。
 □ テーブル、イス、メニューブック、タッチパネル等はお客様の入れ替わる都度、台所用洗剤(海面活性剤)で清拭する。5)レジやカウンターでの対策
 □ ビニールシート、アクリル板等の遮蔽物を設置する。
 □ キャッシュレス化等で接触機会を低減する。

6)行っている感染対策の明示
 □ 行っている感染対策(換気、対人間隔の確保等)のステッカーを店頭に掲示する。
 □ 東京都の「感染防止徹底宣言ステッカー」のように公的機関が認証しているものがあれば、条件を満たせるよう感染対策を充実させ、取得を目指す。

7)お客様にも感染防止対策にご協力いただきやすいよう工夫する:関連情報(7)参照
 □ 待ち位置や利用可能座な席を視覚的に分かるよう明示する。  
 □ 混雑を解消するため、混雑状況や空いている時間の表示を店頭やHP上で行う。
 □ 「大きな声での会話はご遠慮ください」と表示するよりも、「感染防止のため会話を控えていただきありがとうございます。」、「会話の代わりBGMをお楽しみください」など望ましい行動を促すような表示にする。

3.関連情報リンク:
(1)新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針(改正)に基づく外食業の事業継続のためのガイドラインhttp://www.jfnet.or.jp/contents/_files/safety/FSguidelineA4_20514_21.pdf
(2)東京都感染拡大防止チェックシート(レストラン、料理店編)https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/008/429/22.pdf
(3)感染防止徹底宣言ステッカー事業https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/taisaku/torikumi/1008262/1008420/index.html
(4)新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安https://www.mhlw.go.jp/content/000628620.pdf
(5)飲食店における持ち帰り・宅配食品の衛生管理等について
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000628784.pdf
(6)企業向け新型コロナウイルス対策情報 第10回窓の開かないビルにおける換気改善
https://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=1022070
(7)環境省新型コロナウイルス感染症対策における市民の自発的な行動変容を促す取組
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/COVID-19.pdf

文責:守田 祐作(産業医科大学 健康開発科学)
※本文章は、産業医有志グループ(今井・櫻木・田原・守田・五十嵐)で作成しました。厚生労働省新型コロナウイルス対策本部クラスター対策班・和田耕治先生(国際医療福祉大学・公衆衛生学教授)のサポートも受けております。

第18回動画「清掃業における感染予防対策」を下記で配信しております。
https://www.youtube.com/watch?v=2o5m7jcffxs

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信【19】

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信 2020年6月8日付
【19】映画館における感染対策(従業員への感染防止のために)

経営者・総務人事担当者のみなさま、映画館における従業員の感染対策は万全でしょうか?不特定多数の人との接点が多い業務形態ですが、きちんと感染対策を取ることで従業員への感染リスクは低減できます。

1. 課題の背景:
緊急事態宣言が解除され、全国的に映画館での営業再開が始まっております。各劇場では「映画館における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン(全国興行生活衛生同業組合連合会)」等に基づき、スクリーン内の座席間隔を空ける等の各種感染対策を講じつつ営業を再開しているものと思われます。不特定多数の人との接点が多い業務形態であり、従業員の安全を確保することはもちろんのこと、従業員から周囲(同僚や来館者)に感染拡大することも防止していく必要があります。ここでは、従業員における感染対策に重点を置き、ガイドラインではあまり触れられていなかったバックヤードでの対応も含めて解説いたします。

2. 事業所でできる対策:
○ 飛沫感染を防ぐため、バックヤードも含めて社会的距離の確保に留意する
○ 接触感染を防ぐため、作業後の手洗いを徹底し、スタッフ間での物品共有を減らす
○ 労務管理を通じて、体調不良の状態での勤務を避ける

「映画館営業再開ガイドライン(”FURUERU” 編集部)」を参考に、以下にポイントと補足点を記載します。

1)飛沫感染を防ぐため、バックヤードも含めて社会的距離の確保に留意する
来館者との接点はもちろんのこと、バックヤード(事務所・更衣室・休憩室)においても社会的距離の確保、ビニールカーテン等の遮蔽物の設置、フェイスシールドの着用を場面に応じて行い、従業員への接触感染を防止します。
□事務所内に入る従業員を限定する等により、事務所内が混雑する状況を避ける
□スタッフの身だしなみチェック等は広いスペースで最小1m(できれば2m)の距離をお互いに確保して実施する
□屋内での発声練習は控える
□更衣室の利用に時間差を設け、複数の従業員が同時に利用する状況を避ける
□更衣室の利用はなるべく短時間とし、会話をしない
□休憩時間を分散化し、休憩室を同時に利用する人数を減らす
□休憩室の椅子の数を減らし、対面を避けた席配置とする
□典型的な3密スペースである喫煙所は一時的に閉鎖する
□従業員は常にマスクを着用する
□事務所内、休憩室の換気を適宜行う
□チケット窓口、売店では来館者と従業員の間にビニールカーテンやアクリル板等の遮蔽物を設置する
□遮蔽物が設置できない環境で接客対応を行う必要があれば、従業員にフェイスシールドを着用させる

2)接触感染を防ぐため、作業後の手洗いを徹底し、スタッフ間での物品共有を減らす
事務所内での従業員間の物品共有、ゴミの廃棄、トイレの清掃などの場面で接触感染のリスクがありますので、物品共有の機会を減らす、消毒を徹底する、手袋等を着用する、作業後の手洗いを徹底する等の対策を行います。ダイヤモンドプリンセス号の環境検査ではトイレの床から比較的多くコロナウイルスが検出されており、また比較的多くの人が利用する場所ですのでトイレの清掃作業では特に注意が必要です。
□インカム等の物品の共有は控え、なるべく個人専用とする
□どうしても従業員間で物品を共有せざるを得ない場合は、使用の都度、アルコール等による消毒を徹底する
□事務所内のPC・机・椅子・電話・ドアノブ等、多くの従業員が触れる場所の消毒を適宜行う
□チケット窓口や売店ではキャッシュレス決済を推奨し、できるだけ現金の授受を避ける
□チケット窓口や売店で現金の授受が発生する場合はトレイを介して行い、現金に触れた後は手指消毒をする
□チケットのもぎりは来館者自身にお願いし、チケット回収箱などに半券を入れてもらう
□清掃やゴミの廃棄を行う従業員は、マスクに加えて手袋の着用も徹底する
□トイレの清掃作業中は必ず手袋と不織布性のマスクを着用し、手袋・マスクを外すとき、外した後は外面に触れないようにし、手洗いをする
□トイレの蓋がある場合は必ず蓋を閉めて水を流す
□トイレのドアノブ、蓋、便座、洗浄レバー、操作パネル、トイレットペーパーホルダー、手すり、洗面台、鏡など多数の人が触れる場所の消毒を行う
□トイレの床面のモップ掛けを行う
□作業を終えた後は、手洗いや手指消毒をする

3)労務管理を通じて、体調不良の状態での勤務を避ける
施設管理者は以下の点を従業員全員に周知徹底します。
□出勤前に体温測定をし、発熱・風邪症状・倦怠感などがある場合は出勤を控える
□施設管理者は、従業員の緊急連絡先や勤務状況を把握しておく
□保護具の正しい着脱について十分な訓練を行う

3.関連情報リンク:
1)映画館における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン(全国興行生活衛生同業組合連合会)
https://www.zenkoren.or.jp/news-pdf/0514_COVID-19_guideline.pdf
2)映画館営業再開ガイドライン(”FURUERU” 編集部)  
https://note.com/furueru/n/n18d536dbe1cb

文責:今井 鉄平(OHサポート株式会社 代表・産業医)
※本文章は、産業医有志グループ(今井・櫻木・田原・守田・五十嵐)で作成しました。厚生労働省新型コロナウイルス対策本部クラスター対策班・和田耕治先生(国際医療福祉大学・公衆衛生学教授)のサポートも受けております。

第16回動画「寮における感染対策」を下記で配信しております。
https://www.youtube.com/watch?v=HQWJ01CbEcQ

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信【18】

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信 2020年6月1日付
【18】清掃業における感染予防対策

経営者・総務人事担当者のみなさま、清掃作業における感染予防対策は万全でしょうか?個々の現場は作業員に任されていることが多く、現場責任者が常に見ていることは難しいため、作業員一人一人がポイントを理解しておくことが重要です。

1. 課題の背景:
医療機関や軽症感染者の受け入れ宿泊施設などと比べ、一般的な清掃作業においては感染防止対策が十分に講じられていない可能性があります。しかしながら、感染者数が増加する状況下においては、一般的な作業現場においても、多くの人が触れるトイレ・ドアノブ・エレベーターのボタン等の清掃作業を通じて、作業員自身が接触感染をしてしまうリスクがあります。このような場面で作業員の安全を確保しながら業務を行う方法につき述べます。

2. 企業でできる対策:
○ 清掃事業者側は作業前の注意事項を全ての清掃作業者に徹底する

〇清掃作業者は接触感染を防止するための手順に沿った清掃作業を行う
〇トイレでの接触感染に留意して清掃作業を行う

1) 作業前の注意事項を清掃作業者に徹底する
清掃事業者側は以下の点を作業に就かせる清掃作業者全員に周知徹底する。
□出勤前に体温測定をし、発熱・風邪症状・倦怠感などがある場合は出勤を控える
□保護具の正しい着脱について十分な訓練を行う
□接触感染を防止するための作業手順(2,3の内容)を作成し、手順の教育を行う

2) 清掃作業者は接触感染を防止するための手順に沿った清掃作業を行う
日常清掃業務に加えて、多くの人が触れるドアノブ、エレベーターのボタンなどの消毒も求められており、ウイルスに触れることのないように充分注意して作業を行います。
□出勤前に体温測定をし、発熱・風邪症状・倦怠感などがある場合は出勤を控える
□清掃中は清掃する部屋等の換気をする
□清掃前後には必ず石けんと流水で充分に手洗いをし、作業中は顔に触らないようにする
□作業中は必ず手袋を着用し、手袋を脱ぐとき、脱いだ後は外面に触れないようにし、手洗いをする
□作業は1人で行う、または、複数名で行う場合は持ち場を分担するなど、できるだけお互いに距離を取って行う
□ゴミ箱の中にマスク、鼻をかんだティシューなど汚染されたものが入っている可能性があるので、内容物に触れないように気を付ける
□ドアノブ、エレベーターのボタン、照明スイッチなど多数の者の手が触れる場所はアルコール(70%)または0.05%の次亜塩素酸ナトリウム溶液による清拭を行う
□次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いて清拭したあとは、水拭きを行う
□清拭はペーパータオル、消毒用不織布など使い捨て資材を用いる
□保護具、清掃用資材などの廃棄物はビニール袋に入れて密閉する

3)トイレでの接触感染に留意して作業を行う
ダイヤモンドプリンセス号の環境検査ではトイレの床から比較的多くコロナウイルスが検出されており、また比較的多くの人が利用する場所ですので特に注意して清掃作業をします。具体的には2)の対策に以下を追加して実施します。
□作業中は必ず手袋と不織布性のマスクを着用し、手袋・マスクを外すとき、外した後は外面に触れないようにし、手洗いをする
□蓋がある場合は必ず蓋を閉めて水を流す
□汚物が直接触れるところ(不潔箇所)と人の手が触れるところ(清潔箇所)で手袋を交換して作業する
□ドアノブ、蓋、便座、洗浄レバー、操作パネル、トイレットペーパーホルダー、手すり、洗面台、鏡など多数の人が触れる場所の消毒を行う
□トイレの床面のモップ掛けを行う

3. 参考:医療機関、軽症感染者宿泊施設等の清掃について
医療機関や軽症感染者が宿泊療養に利用した施設の清掃については、より厳しい感染防止対策が求められます。医療機関の感染対策チームに相談する、全国ビルメンテナンス協会の「新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた宿泊施設の清掃等マニュアル」を確認するなどしましょう。

4. 関連情報リンク
1) 全国ビルメンテナンス協会 ガイドライン・マニュアル
https://www.j-bma.or.jp/publications/manual?fbclid=IwAR1I5F6OSVTRyTzCzDJUMVClLF-rafiCYB7JCenqqeIw10yChOWxFBR0FRU

2) 全国ビルメンテナンス協会 新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた宿泊施設の清掃等マニュアル
https://www.j-bma.or.jp/wp-content/uploads/2020/05/%E6%96%B0%E5%9E%8B%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87%E5%AF%BE%E7%AD%96%E3%82%92%E8%B8%8F%E3%81%BE%E3%81%88%E3%81%9F%E5%AE%BF%E6%B3%8A%E6%96%BD%E8%A8%AD%E3%81%AE%E6%B8%85%E6%8E%83%E7%AD%89%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AB.pdf

3) ダイヤモンドプリンセス号環境検査に関する報告(要旨)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9597-covid19-19.html

4) CDC: Cleaning and Disinfection for Community Facilities (Interim Recommendations for U.S. Community Facilities with Suspected/Confirmed Coronavirus Disease 2019), 1 April, 2020
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/community/organizations/cleaningdisinfection.html

文責:櫻木 園子(一般財団法人京都工場保健会 産業保健推進部)
※本文章は、産業医有志グループ(今井・櫻木・田原・守田・五十嵐)で作成しました。厚生労働省新型コロナウイルス対策本部クラスター対策班・和田耕治先生(国際医療福祉大学・公衆衛生学教授)のサポートも受けております。

第15回動画「コロナ禍における持病管理」を下記で配信しております。
https://www.youtube.com/watch?v=qMhHd5jZkOg

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信【17】

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信 2020年5月28日付
【17】 タクシーにおける感染拡大防止

タクシーを運行する、あるいは利用する企業の経営者・担当者のみなさま、タクシーの車内は、乗客から運転手へ、運転手から乗客へ、両方向の感染拡大に注意が必要です。運行する側はもちろん、利用する側も協力して対策をとりましょう。

1. 課題の背景:
2020年2月から4月にかけて、複数の都道府県におけるタクシー運転手の新型コロナウイルス感染例が報道されました。運転手と不特定の乗客が同じ車内で過ごす場面では飛沫感染のおそれが、運賃の受け渡しや荷物のトランクへの収納などの場面では接触感染のおそれがあります。また、運転手が感染した場合、運転手自身だけでなく他の乗客へ拡がることも懸念されます。
他地域からの観光客が多い沖縄県では、連休期間中の5月初旬までに県立病院の医師らがタクシー向けの対策をまとめた文書と動画が公開されました。全国的には、5月18日に(一社)全国ハイヤー・タクシー連合会から「タクシーにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン(第1版)」が公表されました。今回は、これらの資料を参考にタクシー向けの対策を紹介します。

2. 企業でできる対策:
○ 労務管理・運行管理を通じて、体調不良の状態での乗務を避ける
○ 飛沫感染を防ぐため、窓を開けるなどして常時換気をする
○ 接触感染を防ぐため、運転手の手指衛生や乗客が降りた後の拭き取りを行う

2-1. 労務管理・運行管理
基本的な対策
□ 体調不良時に安心して休めるよう、休暇や欠勤などの制度を整え、従業員に周知する
□ 出勤時(乗務開始時)の体調は、運転手自身と管理者の両方向で確認する
□ 営業所内での「3密」(密閉・密集・密接)を避ける
地域の流行状況に応じて考慮する対策
□ 高齢、基礎疾患があるなど重症化しやすい条件に該当する運転手は
他地域からの客が多い場所での客待ちを控える
まず、体調不良の状態での乗務を避けることは、新型コロナウイルスに限らず様々な感染症の対策としても、また交通事故のリスクを減らす観点でも必要です。発熱・倦怠感などの症状については、日々の点呼等の中で運転手からの自己申告と管理者による確認を行いましょう。この際、点呼の場である営業所内での「3密」(密閉・密集・密接)を避けること、アルコールチェッカーなどの物品の共用を減らす(やむを得ず共用するときは洗剤などで拭いてから渡す)ことも大切です。
地域の流行状況に応じて考慮する対策もあります。例えば、自地域での患者が少なく、主に他地域からの持ち込みを警戒する状況下では、他地域からの客が多く乗車する空港、新幹線の駅、ホテルといった場所での感染リスクは比較的高いと見なします。高齢、基礎疾患があるなど重症化しやすい条件に該当する運転手は、このような場所での客待ちを控えることも対策になります。
なお、経営者が運転手ら従業員を取り締まるような管理一辺倒になってしまうと、従業員にとっては「正直に申告すると損をする」「生活が成り立たなくなる」と捉えられ、最悪の場合、体調不良に自ら気づいても隠すことにつながりかねません。休暇や欠勤などの制度面を含め、もしもの時に安心して休めるようにしておくことが前提条件として大切です。

2-2. 飛沫感染の防止
□ 運転席と後部座席の間にビニールカーテン等による仕切りを設ける
□ 運転手はマスクを着け、乗客にもできるだけ着けてもらう
□ 走行中は常時窓を開けて換気する
※ 消毒剤を噴霧するタイプの商品は人体への安全性と効果が公的に認められていない
運転席と後部座席の間に仕切りを設ける、運転手と乗客両方がマスク(話す時に飛沫を飛ばさないことが目的なので布マスク可)を着けるといった方法は、費用面を含めて着手しやすく、すでに多くのタクシーで導入されているようです。
走行中は、運転席・助手席だけでなく後部座席も窓を開け、常時換気することが望ましいです。雨が降っているときや乗客の協力が得難いときの次善の方法としては、窓の上部数センチだけ開け、カーエアコンを外気導入モードで運転することが挙げられます。
一方、人体以外での実験結果を根拠として、消毒剤を噴霧するタイプの商品が売り込まれるケースも散見されます。これらの商品は、人体に吸入した場合の安全性や感染症対策としての効果が公的に認められておらず、消費者庁から注意喚起がなされています。例えば次亜塩素酸水(電解水)は、生成装置から出たばかりの流水による食品洗浄が主な用途であり、食品添加物の認可は最終食品の完成前に除去されることが条件です。容器に詰め替えられて時間が経った場合や空気中に噴霧された場合の安全性や効果が認められているわけではありません。

2-3. 接触感染の防止
□ 乗客の荷物を触った後、ハンドル等を触る前に、手指消毒を行う
□ 運賃授受の後、ハンドル等を触る前に、手指消毒を行う
□ 乗客が降りた後、家庭用洗剤を用いて車内を拭き、手指消毒を行う
□ 車庫に戻った時や帰宅時は、流水と石けんで手を洗う
□ 業務中に着た制服等はできるだけこまめに洗濯する
□ キャッシュレス決済の導入・利用を促す
まず、適切なタイミングと方法による手指衛生(アルコールによる手指消毒または流水・石けんによる手洗い)が大切です。客の荷物を触った後、運賃授受の後は、ハンドルやシフトレバーなどを触る前に手指消毒を行います。アルコール手指消毒剤の入手が難しい場合は使い捨てのウエットティッシュを使います。水道が使える車庫に戻った時や帰宅時は手を洗います。手袋を使えば省略できると思われるかも知れませんが、自分の顔を触ってしまえば手袋の有無は関係ありませんし、マスクと同じく手袋も着脱時には素手で触れてしまうため、外した後の手指消毒または手洗いが必要です。制服等はこまめに洗濯できるよう、十分な数を支給すること、また洗濯しやすい素材にすることが望ましいです。
乗客が降りた後は、手すりなど車内で手を触れやすい場所を中心に拭き取りを行います。界面活性剤入りの家庭用洗剤(水で薄めたもの)を使い捨ての紙や布にしみこませて拭く方法は、扱いやすさと内装の素材の傷めにくさの両面で適していると考えられます。拭き取りの後も、ハンドルなどを触る前に手指消毒を行いましょう。
その他、ICカードやQRコードを用いたキャッシュレス決済を使うことで、現金を手で触る機会を減らすことが期待できます。

3. 関連情報リンク:
1) (一社)全国ハイヤー・タクシー連合会
タクシーにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン(第1版)
http://www.taxi-japan.or.jp/content/?p=article&c=3111&a=13
2) 沖縄県立中部病院感染症内科
タクシー運転手に求められる新型コロナウイルス対策 7つのポイント
http://plaza.umin.ac.jp/~ihf/others/200502.pdf
3) 沖縄県医師会(YouTube) タクシー運転手向けの感染対策について
https://www.youtube.com/watch?v=MgH_LZU29eA
4) 消費者庁 新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうする商品の表示に関する
改善要請等及び一般消費者への注意喚起について(2020年3月10日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/019228/

文責:田原 裕之(産業医科大学 産業精神保健学)
※本文章は、産業医有志グループ(今井・櫻木・田原・守田・五十嵐)で作成しました。厚生労働省新型コロナウイルス対策本部クラスター対策班・和田耕治先生(国際医療福祉大学・公衆衛生学教授)のサポートも受けております。

第14回動画「訪問介護における感染対策(感染が疑われる利用者への対応)」を下記で配信しております。
https://www.youtube.com/watch?v=EZR5uiGNAKw

緊急事態宣言解除後の留意点につきインタビューを受けました。Yahoo Newsに記事が掲載されましたのでご参照ください。https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidamasahiko/20200526-00180352/

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