服部産業医事務所の活動

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信【63】

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信 2022年2月7日付
【63】事業継続計画(BCP)について

経営者・総務人事担当者のみなさま、オミクロン株の流行が急拡大し、事業場内で感染や濃厚接触のために外出自粛する従業員が増え、事業の継続が困難になる状況が発生しています。出勤できない従業員が多数生じた場合への備えはできているでしょうか。

1. 課題の背景:
新型コロナウイルスオミクロン株は、感染してから発症するまでの期間が短いことがわかってきました。これにより、濃厚接触者の外出自粛期間が14日から7日に短縮されましたが、それを上回るペースで感染者・濃厚接触者が増加し、事業の継続に影響を及ぼしています。経済産業省からも「コロナ禍における事業継続に向けた取り組みの強化について(要請)」が出されており、事業継続計画(BCP)を策定し、備えることが重要です。

2.企業でできる対策
〇 BCPの発動条件、組織体制を明確にする
〇 事業の継続に最低限必要な業務と人員を洗い出す
〇 ひな形を基に、感染症BCPを策定する
〇 労働力が不足した場合の対策を検討する
〇 BCPについて従業員に周知し、各自の取るべき行動を確認する

1) BCPの発動条件、組織体制を明確にする
どこに感染者等が発生した場合にBCPを発動するかを決定します。例えば、国内、都道府県、市町村、自社の拠点などです。新型コロナウイルス感染症についてはすでに自社内での感染者の発生を経験しているかもしれませんが、今後の備えとして例えば都道府県内での発生がわかった時点での対応を決めておいても良いでしょう。BCP発動時の組織体制として、司令塔となる担当者、情報、供給、予算、現場など、事業継続に必要な各担当者を決め、具体的に何をするのかを予め明確にしておきます。

2) 事業の継続に最低限必要な業務と人員を洗い出す
会社の存続にかかわる最も重要性の高い事業(中核事業)を特定します。その事業に付随する業務(重要業務;製造業であれば、受注、部材在庫管理、製造、出荷、配送、支払い、決済など)を洗い出します。その上で、中核事業、重要業務を継続するために必要な資源を確認します。

経営資源
〇人: 従業員、協力会社 など
〇物: 施設・設備、原材料、電力・ガス・水道 など
〇情報: 社内システム、協力会社とのネットワーク、バックアップデータ など
〇金: 事業が停滞している間の運転資金

情報のバックアップや運転資金(現・預金)については事前の準備が大切です。

3) ひな形を基に、感染症BCPを策定する
BCPをゼロから策定するのは難しく、各団体が提供している感染症BCPのひな形を基に策定を進めることをお勧めします。例えば、大阪府の「超簡易版BCP「これだけは!」シート」(参考情報1))では、以下のことを決めるようになっています。

〇組織体制:
・各担当責任者(正・副)を決める(情報、供給、予算、現場、特命)
〇予防対策:
・情報収集と社内への情報提供
・新型コロナウイルス感染症に関する社外への情報発信
・健康管理の徹底
・施設への立入制限
・対人距離の確保
・社内設備の消毒
・勤務体制の変更
・出張や外出の制限
・事業の縮小または拡大等
・事業継続に必要な物資・サービスの確保
〇感染者対策:
・従業員に感染の疑いがある場合
・従業員が感染した場合
・従業員の同居の家族に感染の疑いがある場合
・従業員の同居の家族が感染した場合
・取引先において感染者が発生した場合
・事業の縮小等
〇復旧対策:
・事業の再開
・臨時態勢の維持
・協調的サプライチェーンの確立

一つ一つはこの2年間にすでに取り組まれていることが多いのではないでしょうか。これをBCPとしてまとめてルール化することで、何をすべきかが明確になり、抜けを防ぐことができます。ぜひ参考にしてください。
復旧対策では、自然災害とは異なり急に人の動きが活発になると感染の再拡大の恐れがあるため、徐々に戻していく必要があることに注意します。

4) 労働力が不足した場合の対策を検討する
すでに、労働力が不足している企業もあるかもしれません。その場合は、以下のことを検討してみてはいかがでしょうか。

□出勤停止の基準が厳しくなりすぎていないか確認し、適正な基準にする 
厳しすぎる例 :
・療養期間(発症から10日かつ症状軽快後72時間)を終了後にさらに待機期間を設けている
・同居人が濃厚接触者となった場合に出勤を停止している

□通常の操業が難しい場合に、納期調整や事業の縮小を検討する
サプライチェーンに含まれる企業から納期の調整を要請されることもあるかもしれません。自社で縮小する事業が他社にとっては中核事業であるなど、事情の異なる場合もあるでしょう。可能な範囲で協力し、感染が落ち着いたときには共に復旧できるようにしたいものです。

5)BCPについて従業員に周知し、各自の取るべき行動を確認する
BCPを策定しても、いざという時に従業員がそれに従って動けなければなりません。BCPの内容を周知し、発動時に各自がどのように行動するかをシュミレーションしておきましょう。

3.関連情報リンク・参考情報:
1) 中小企業の事業継続計画(BCP)(大阪府)
「超簡易版BCP『これだけは!』シート(新型コロナウイルス感染症対策版)
https://www.pref.osaka.lg.jp/keieishien/bcp/
2) 感染症対応BCP策定の手引き及び業種別BCP事例集(大分県)
https://www.pref.oita.jp/soshiki/14040/bcpmodel-tebikijireishuu.html
3) 中小企業BCP策定運用指針~緊急事態を生き抜くために~(中小企業庁)
「入門コース」「基本コース」
https://www.chusho.meti.go.jp/bcp/index.html

文責:櫻木 園子(一般財団法人京都工場保健会)

動画を下記で配信しております。
〇第61回動画「新型コロナワクチンの追加接種(3回目接種)について」
https://www.youtube.com/watch?v=vKxJhDlY2UI

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