最近話題のアレ「乳がん」①
- 2015年10月06日
- 健康管理(宮本)
保健師の宮本です。
めっきり冷え込んできましたね。
今の住まいで初めての冬を越した去年、あまりエアコンが効かずに毎日凍える思いだったことを思い出しました。
今年こそヒーターを買ってしまいそうです。
さて、肝内胆管がんで亡くなった川島なお美さんや乳がんを公表した北斗晶さんなど、ここ数週間は「がん」の話題を耳にする機会が多かったように思います。
特に北斗さんは毎年検診を受けていたにも関わらず右乳房全摘、リンパ転移までしているということに衝撃を受けた方も少なくないはずです。
そこで数回に亘って「乳がん」をテーマにお話してみようかと思います。
Q.1 そもそも乳がんってなに?
乳がんを説明する前に、その発生部位である「乳房」について知る必要があります。
乳房は、出産時に乳汁を分泌する大切な役割をもつ皮膚の付属器官です。
その中には「乳腺」と呼ばれる腺組織と脂肪組織、血管、神経などが存在しています。
乳腺組織は15~20の「腺葉」に分かれ、さらに各腺葉は多数の「小葉」に枝分かれしています。
小葉は乳汁を分泌する小さな「腺房」が集まってできています。
各腺葉からは乳管が1本ずつ出ていて、小葉や腺房と連絡し合いながら最終的に主乳管となって乳頭(乳首)に達します。
乳がんはこの乳腺を構成している乳管や小葉の内腔(内側)を裏打ちしている上皮細胞から発生します。
がん細胞が乳管や小葉の中に留まっているものを「非浸潤がん」あるいは「乳管内がん」、乳管や小葉を包む基底膜を破って外に出ているものを 「浸潤がん」といい、この他、非浸潤がんが乳管が開口している乳頭に達して湿疹様病変が発生する「パジェット病(Paget病)」の3種に大別されます。
Q.2 治療しないとどうなる?
治療をせずに放っておけば、↑の図のように周囲の組織に拡がり、リンパ管を通って脇の下(腋窩)のリンパ節や鎖骨の上のリンパ節、あるいは血液を通って骨・肺・肝臓などの臓器へ転移します。
その結果、命を脅かすことになります。
このような事態を未然に、あるいは可能な限り防ぐためには乳がん検診によって早期発見に努め、できるだけ早く治療を開始しなければなりません。
Q.3 北斗晶さんは毎年検診を受けていたのに、どうして乳房全摘が必要になる程悪化してしまった?
乳がんの治療方法は、以下の点から決められています。
■場所や個数、サイズ
比較的切除しやすい場所で個数も少なくサイズも小さい場合は、部分切除と言ってその癌の周りをくりぬくような手術をします。
この場合、「必要な部分だけを切り取る」ことになりますので、大きな見た目の変化はありません。(乳房温存)
■リンパ節への転移
がんは進行するに従ってその場所だけでなく、より遠くに広がろうとします。
乳がんの場合には腋窩リンパ節(脇の下)や、鎖骨上窩リンパ節(鎖骨の上)に転移することが多く、画像検査や組織検査で転移があるかどうかを決めます。
転移がある場合にはリンパ節も一緒に取ってしまう必要があるので、部分切除だけでは不十分です。
■年齢
一般的に若い人の場合、なるべく乳房を温存するような処置を検討します。
また、高齢になる程癌の進行速度が落ちますので、切除範囲を狭くすることもあります。
■癌の種類
治療の決定事項として一番大切なのが、がんの種類です。
女性ホルモンにどの程度依存しているか、ホルモン剤がどの程度使えるかによって手術で取るべき範囲が決まります。
ホルモンと関係なく成長する種類の癌は手術の後にホルモン剤の効果がありませんので、手術でがんをすべて取る必要があります。
以上より、北斗さんの場合がんの中でも悪性度が高く進行が早いがんであったため、「乳房全摘出」という治療法になったと考えられます。
Q3. 毎年の検診だけでは不十分?
基本的には毎年の検診で早期発見ができます。
ただし北斗さんのように進行が早いものは検診を受けたときには癌が見つからなくても、次回検診までの間に乳房全摘出が必要なくらい進行してしまう場合もあります。
しかしながら、1年で全身に転移して手術ができない…といういわゆる「進行癌」になることは少ないです。
次回は早期発見の要、乳がん検診について取り上げます。
お楽しみに!
参考 アストラゼネカ株式会社「乳がんJP」
http://www.nyugan.jp/about/fact.html